共同研究・競争的資金等の研究課題

2018年4月 - 2021年3月

CDW-Mott系における非平衡状態ランドスケープの理論研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 若手研究  若手研究

課題番号
18K13495
配分額
(総額)
4,160,000円
(直接経費)
3,200,000円
(間接経費)
960,000円

本年度は、主として1T-TaS2の微視的モデルの構築とこれに基づいた光誘起ダイナミクスの研究を行った。
この物質は電子や格子の複雑な相互作用によって、平衡・非平衡で様々な電荷密度状態を示すことが実験的に示され、不揮発性メモリなどへの応用が期待されている。しかし、微視的理論による解明は十分に進んでいない。従来の理論は、格子変形を固定した上での強束縛模型であり、電子間の相互作用を取り入れることが出来ていなかった。
本研究ではこの理論を拡張し、格子変形を力学的自由度として取り扱い、さらに電子間のクーロン斥力を取り入れた。その結果、平均場近似の範囲内で、1T-TaS2の基底状態を定性的に再現することに成功した。この状態は絶縁体であり実験事実と整合する。これが従来の理論より進歩した点であり、より現実に近い理論的モデルが構築出来たと考えている。さらにこの理論を用いて、強いレーザー照射で引き起こされる電子・格子のダイナミクスを調べた。レーザー電場強度を十分強くすると10フェムト秒程度の短時間で電荷密度波秩序が融解すること、また長時間領域では格子変形の振動に追従して電荷密度が変動することを示した。1T-TaS2の光誘起初期ダイナミクスの理論計算はこれまでにほとんど無く、この物質の非平衡現象を解明する上で、一つの貢献になったかと思う。
本年度はいくつか関連する研究にも進展があった。1T-TaS2に関して、次年度以降に着手する予定だった現象論のアプローチについても、自由エネルギーの計算プログラムが構築出来た。また、光誘起ダイナミクスに関して、誘起される電流から生じる高次高調波についても強束縛模型による解析を行った。

ID情報
  • 課題番号 : 18K13495

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