共同研究・競争的資金等の研究課題

2017年4月 - 2021年3月

戦後日本における世俗の慰霊空間の研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
17K06758
配分額
(総額)
4,420,000円
(直接経費)
3,400,000円
(間接経費)
1,020,000円

当該年度の研究成果の具体的な内容:主として東京都の戦没者追悼施設にかかわる建築図面の資料整理・調査を行った。東京都の戦没者追悼施設としては相田武文氏設計の東京都戦没者霊苑(東京都文京区、1988年)および硫黄島の鎮魂の丘(東京都小笠原村、1983年)を対象とした。対象資料は相田武文氏所蔵の設計図面等である。とくに東京都戦没者墓苑については、実施案以外にも複数の案が確認された。所蔵資料を元にした相田武文氏への聞き取りとともに、慰霊、追悼、記念のための空間の設計において、どのような空間的な構成がありうるかを調査した。
当該年度の研究成果の意義:東京都戦没者霊苑の事例は20世紀前半まで軍用地として利用されてきた土地が、戦後どのように再利用されたかを示す一例となっている。既存の慰霊碑・造作物の整理と再編のbefore/afterの事例でもある。資料中には実施案の他7案の図面が残されている。1987年に制作されたものだが、これらの計画案の異同から1980年代なかばに建築家が構想し得た、戦後の慰霊空間の再編の事例として歴史的な意義をもつものである。
当該年度の研究成果の重要性:太平洋戦争後の日本の慰霊空間は数多く存在するが、そのなかでも建築家が主体的かつ継続的に関わった事例は多くなく、東京都と相田武文氏の2つの計画は歴史的にみても重要性をもつ例である。一般に、慰霊の空間にはある種の象徴性が求められる。ポストモダニズム期の象徴性の表現において相田氏には先行する住宅作品群があるが、70-80年代の日本の建築表現の代表的な事例としても重要な意味をもつ。

ID情報
  • 課題番号 : 17K06758