2021年8月 - 2023年3月
膝関節疼痛治療の標準化に向けた「膝の痛みの地図」の形態学的解析
日本学術振興会 科学研究費助成事業 研究活動スタート支援 研究活動スタート支援
本研究は、膝関節における感覚神経を対象に、詳細な肉眼解剖学的解析および組織学的解析を行うことで、膝関節における感覚神経の分布を詳細に明らかにするとともに、その末端の位置および形態から、分布する感覚神経の機能や伝達経路、その過程で生じる障害についての解剖学的基盤を構築するものである。これまで、解剖用遺体2体4側の下肢を用いて、まずは肉眼解剖学的解析を行い、大腿神経および外側大腿皮神経の走行に関する詳細な知見を得た。大腿神経前皮枝のうち最も内側の枝は閉鎖神経の内側皮枝と交通しており、また大腿神経前皮枝の大腿前面中央付近に分布する枝は近位において陰部大腿神経大腿枝と交通する様子も認められ、大腿前面において分布するそれぞれの皮神経は、交通しながら下行して遠位の支配領域へと分布してゆくという知見を得た。また、一部の神経枝について肉眼解剖学的に観察可能な範囲を超えて観察を行うため、組織学的解析を行い、感覚神経が侵入部位から方向を大きく変えながら密性結合組織内を走行して膝蓋骨近傍まで達することを明らかにした。さらに大腿後面から膝関節後面にかけて解剖を行い、先行研究において示されている坐骨神経の枝である関節枝が膝関節関節包に侵入することを確認した。こうした知見から、膝関節に分布する感覚神経についてはこれまで明らかにされていない分岐元および走行経路の存在が示唆された。今後は例数の増加および観察対象とする神経の追加によって、更なる成果を得ることが期待される。
- ID情報
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- 課題番号 : 21K21266
- 体系的課題番号 : JP21K21266