2017年6月
先天性大腿骨短縮症に対する骨延長後に生じた膝拘縮・恒久性膝蓋骨脱臼に対し二期的に四頭筋形成および膝蓋骨脱臼整復を行った1例
JOSKAS
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- 巻
- 42
- 号
- 3
- 開始ページ
- 770
- 終了ページ
- 775
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- (一社)日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会
【症例】14歳女性.生下時より左大腿骨の短縮(脚長差2cm)を指摘され,先天性大腿骨短縮症の診断で前医にて経過観察を開始された.補高にて保存的に経過観察されたが,経時的に脚長差が拡大し7cmとなった13歳時にイリザロフ創外固定器を用いた大腿骨骨延長術が開始された.延長中に膝関節の外側脱臼を生じたため下腿へ固定器を延長し脱臼を整復し,1年3ヵ月で延長終了・抜釘するも高度の膝関節拘縮と恒久性膝蓋骨脱臼となり,14歳時に紹介受診となった.左膝関節ROM(伸展/屈曲°)は+5/40であったが高校進学後の治療を希望されたため,ROM訓練で経過観察,15歳時ROM +5/95にて手術治療を計画した.初回手術でまず骨延長に伴う四頭筋の癒着の解離を行ってROMを獲得したうえで,二期的に近位・遠位リアライメントを含む膝蓋骨整復を行う予定とした.初回手術で関節鏡検査・拘縮解離を行って麻酔下ROM +5/135を獲得後,持続大腿神経ブロック(FNB)併用にて翌日から理学療法を開始し,術後4週でROM +5/120で退院した.その後,ROMが保たれた状態で1年後に外側支帯切離,脛骨結節前内側移行,拘縮解離の際に切除した腸脛靱帯を用いた内側膝蓋大腿靱帯再建,内側広筋前進術,四頭筋腱のV-Y前進術を行った.術中屈曲90°までは脱臼しないことを確認し,FNB併用で術後2日目からCPMを徐々に開始した.術後2週で屈曲80°,4週で115°を獲得して退院し,リハビリを継続した.学校生活には運動以外とくに支障なく復帰し,術後半年で膝蓋骨脱臼なく屈曲140°を獲得し,癒合した脛骨結節部のスクリューを抜釘した.術後1年半の現在も脱臼なく屈曲140°を維持しているがextension lag 10°,大腿周囲径(膝蓋骨上10cm)の患健差5cmと四頭筋萎縮が残存し,筋力の回復は十分でなかった.単純X線では術後に得られた膝蓋骨のアライメントは良好に保たれていた.先天性大腿骨短縮症は稀であるが,その骨延長の際の合併症は高率であり十分な注意を要する.合併症としての膝関節拘縮と恒久性膝蓋骨脱臼に対し二期的手術を行い,良好なROMと膝蓋骨のアライメントが獲得できた.まだ若年であり,今後の関節症変化の発生など経過観察が必要である.(著者抄録)
- ID情報
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- ISSN : 1884-8842
- 医中誌Web ID : 2017390264