2018年4月 - 2021年3月
胚盤胞補完法を用いた異種生殖細胞の発生学的解析
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
胚性幹細胞・人工多能性幹細胞が始原生殖細胞 (PGC: Primordial Germ Cells) から精子または卵子にどのような経過をたどって分化・発生していくかを詳細に解析するため、本年度は多能性細胞およびPGCに特異的な発現を示し、かつ重要な機能を持つことが知られている Prdm14遺伝子をターゲットに定め、ラット当該遺伝子の開始コドンから第4エクソンまでをCRISPR/Cas9システムにより欠失させたノックアウトラット (Prdm14/KO)、および同領域をH2BVenusに置換したノックインラット (Prdm14-H2BVenus) という2種類の遺伝子改変ラットを作製した。Prdm14/KOラットの胎生15.5日齢、出生1日齢、4週齢、および8週齢における生殖隆起・性腺を目視あるいは免疫組織染色によって観察したところ、胎生15.5日齢KO個体の生殖隆起には生殖細胞特異的に発現するVasa陽性の細胞は認められなかったが、野生型ではVasa陽性の生殖細胞の存在が確認できた。一方、生後1日齢では雌雄KO個体の卵巣・精巣ともに正常に見えたが、4週齢以上では卵巣の消失ならびに精巣の萎縮が認められた。萎縮精巣を免疫組織染色したところ、ライディッヒ細胞とセルトリ細胞のいずれも観察されたが、Vasa陽性の生殖細胞はまったく認められなかった。また、Prdm14-H2BVenusラットの着床後の胚におけるVenus の発現パターンは、PGCマーカーであるTfap2c遺伝子の発現パターンと一致していた。以上、Prdm14/KOラットは生殖細胞のみを欠損するという特徴を有し、Prdm14-H2BVenusラットはVenusの発現を指標にすることで PGCの動向を追跡することが可能で、ラットにおける生殖細胞の出現時期、あるいはその後の発生過程を明らかにできた。
- ID情報
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- 課題番号 : 18H02367
- 体系的課題番号 : JP18H02367