研究ブログ

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Russia-Japan Winter School

もう半月ほど前に終わってる話なのですが、京都大学との共同プロジェクトであったWinter School
が無事に終了しました。関係者の皆様お疲れ様です。
詳しい話は筆無精な僕が書くよりも武部さんが書いているものを見ていただいたほうがずっと正確
なのでそちらを見ていただくことにして、以下は個人的な感想です。

武部さんの研究ブログ:日露冬の学校冬の学校終了

モスクワがちょうど一番寒い時期に1ヶ月弱という長い期間滞在することになっていたので体調
を崩したりストレスをため込んでしまう学生さんが出てくるんじゃないかと思ったのですが、
風邪を引いたり疲れがたまってしまったりすることはあっても特に大きな問題もなく皆さん無事に
過ごせたようです。
7月に京都で行われていたSummer Schoolのときにモスクワから参加したHSEの学生さんたちと
は数学の話も他の話題についてもずいぶん盛り上がっていたようですし、一緒に食事に行ったり
や何やらで厳寒のモスクワでも憂鬱になることなく過ごせたようです。京都の学生さんついでに
僕も食事についていかせてもらっていたので1月は色々おいしいものが食べれたりしました(笑)

Winter Schoolの講演については僕は半分くらいしか参加してないのですが、京都の学生さんも
中盤以降は積極的に質問してくれるようになっていたのがロシアっぽくてよかったかと思います。
ロシア側の学生の人たちはWinter Schoolの他に通常の授業やセミナーの予定がつまっていたのも
あって後半はむしろお疲れ気味だったようにも見えました。分野で見ると日露ともに幾何の人の
活躍が目立っていたような気がします。

何度かやっているうちに学生同士がだんだんお互いにどんな数学に興味があるのかわかってきた
ような感じだったので今度は偉い先生の講演を聴くだけでなくて学生同士に自分の研究について
講演してもらったりするのもいいかもしれませんね(とは言っても僕はこのWinter Schoolには
直接関わってないのですが)。
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HSE Seminar: Localization of affine W-algebras at critical level

HSEのセミナーで初めて講演したので報告。
前日にセミナーのオーガナイザーをされている先生が直接研究室を訪ねてこられて、
「明日何か話してくれないか」と直接依頼されてしまったので突然の話でしたが
断れませんでした。HSEに来て初めての講演だったので何の話をするのかでだいぶ
迷いましたが、ちょうどarXivに共著の論文を公表したばかりだったのでその話を
することにしました。
日本数学会の講演も含めて何度か他の場所で話したことのある内容だったので、基本
的な構成は変えずに前回までの反省を元に少し改良して話しました。

話の内容はMalikovさん(共著者の一人)たちが導入したCDO(Chiral Differential
Operators)という頂点代数の層の理論と、[Kashiwara-Rouquier]などで考えている
symplectic manifoldのdeformation-quantizationとして構成される非可換代数の層の
理論をミックスするとCDOの枠組みではできなかったaffine W-algebraの局所化が
できるよ、って話なのですがこれは90分とかで講演するのは結構悩ましい題材です。
どういうことかと言いますと、「affine W-algebraの局所化」の話である以上まず
affine W-algebraがどういうものかの説明をしないといけないのですが、affine W-algebra
をまともに定義しようとするとsemi-infinite cohomologyの理論を用いたDrinfeld-Sokolov 
reductionとかを持ち出す必要があります。これをまじめに説明し出すとそれだけで
90分費やしたうえで、聴衆に「よくわからないけど難しい代数」という以上の感想
を与えずに終わってしまうことが目に見えているので、なんとか定義をごまかした
上でaffine W-algebraがどういうものかを説明しないといけないわけです。その上で
さらにaffine W-algebraという頂点代数を頂点代数の層を用いて局所化するという
内容なので頂点代数とは何かを説明しないといけないわけですが、頂点代数の定義
をまともにしだすとBorchard's identityとか一見しただけでは面食らうだけの式が
出てくるのでなるべくまともな定義をさけてなんとか気持ちだけ伝えるということを
したいわけです。さらにこの話ではarc spaceという無限次元代数多様体とか、
deformation-quantizationとかちょっとなじみがないものがたくさんでてくるので
正直定義だけでいっぱいいっぱいな話になってしまいます。(でもこれらのちょっと
なじみがなくて一瞬面食らうような題材の数々が一緒にまとめて煮込んでやるとなかなか
おもしろそうな感じがしてくるというのが伝えたいところなんですが)

僕は最近はわりとこの手の「ちょっとまともに話をされると困惑する」ような題材を
適当にごまかしてなんかわかった気にさせる話し方については得意でして、日本数学会
の時には頂点代数の専門家から「あんな(いいかげんな)頂点代数の説明は初めて聞い
たので、とても新鮮だった。」とお褒めの言葉をいただきました。
なので今回も前回までの反省を元に、適当にごまかしながらも相手が食いつきそうな部分
を適当にちりばめて話すべく万全の体制をもってセミナーに望んだわけです。

講演前にオーガナイザーの先生(の一人)に「ロシアにきてまだ間もないからロシアス
タイルのセミナーにはまだ慣れてないだろう。みんな容赦なく質問するからね。」と言わ
れました。ロシア(人)のセミナーの場合、本当に質問が多いのでかなり日本とは勝手が
違います。端的に言うと「講演の最中に5分〜10分の間、誰からも質問が出なければおそ
らく誰も聞いてない」という状況かと思います。あるいは「うちの師匠がたくさんいる。
しかもみんな注目している部分が違うのでそれぞれ勝手な質問を始める。しまいには
講演者をそっちのけで勝手に話をし出す。」というほうがわかりやすい可能性もあります。

結果。サッカーに例えるならば「終始ロシアのペースで試合が進んだものの自陣ゴール前
の混戦で粘りきり、なんとかゴールを割らせることなく引き分けに持ち込んだ」という
感じでしょうか…。
ちょっと対ロシア人用の話し方は改めて研究する必要がありそうです。こちらがうまくご
まかそうとしても、ロシア人は少しでもわからないことがあると躊躇無く質問するので
結局かなりちゃんと説明する必要が出てくる感じでした。どんな話し方をしても誰かは
相当量質問しなければ納得しない人が出てくることは明白なので、講演内容はラフに考え
ておいて時間が来たらいつでも止められるように落としどころを用意しておいたほうがい
いのかもしれません。

以上、簡単な初戦報告でした。

追記:一通り話し終わったあとでLando先生から出てきた質問がなんか武部さんが書いてい
たKrichever-Novikov代数みたいな内容だなーと思いながらしゃべっていたら、その後で
Lando先生とKazaryan先生がロシア語で「Krichever-Novikov代数がどうこう」とかと話し
ていたように聞こえました。でもそこにつっこめるほどそちらの代数はよく知らないし、
そもそもロシア語だったので何話しているのかはわからなかったから素直に聞こえてない
ことにしておきました^^;
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ロシア語のセミナー

ちょっと実際の日付からは間が開いてしまったのですが、11月17日に初めてHSEで開かれている
セミナーに出てみました。セミナー自体はHSEで基本的には毎週開かれている可積分系メインの
セミナーのようです。ポイントは板書も含めてすべてロシア語で行われるところ。

スピーカーはKazarian (Kazaryan)さんで内容はBethe algebraの話のようでした。(セミナー案内も
ロシア語で書かれていたのでまともに読んでませんでした^^; 「Bethe algebra」はロシア語だと
「алгебра Вете」と書いてあったのでわかりやすかったのがまだ救いです。)

参加者は12人くらいでその半分くらいが学生だったような感じでした。もっとも若いFaculty member
と学生の見分けはよくついてないです。
実際に講演を聴いてみると、数式は世界中で共通なのでその部分はわかるし話していることを注意
深く聞いていると専門用語は英語と共通の単語も多いので思っていたよりもついていけた気もします。
問題は黒板に書く板書のうちロシア語で書かれている(数式でない)部分。もちろんロシア語をはじめ
て1ヶ月ほどしかたたない僕が内容を理解できるはずもないのですが、むしろ黒板の字がほとんど判別
できない^^; ロシア人はブロック体でなく筆記体を使うみたいですが、黒板に書き殴られたキリル文字は
ロシア語に慣れていない僕にはほとんど判別できませんでした。ある程度単語がわかっていれば内容か
らだいたい何を書いているかあたりがつくので解読ができるようになるんだと思うのですが、基本的な
知識が全然足りないのでさっぱりという感じです。
一方で黒板を一生懸命眺めてなかなか解読できない場合でも、キリル文字は所詮表音文字なので(しかも
幸運なことにかなりつづりに忠実)話している声を注意深く聞いていると何が書いてあるのかヒントにな
るかも。
gl_n(t)と書いた代数をなんて呼んでいるのか黒板の文字は解読できなかったのですが、繰り返し声に出して
いた発音を適当に辞書で調べてみたらそれっぽいものがでてきました。どうも「current algebra」のことは
「алгебра токов」と言っているようです。(これはその後武部さんにも教えてもいただきました)

学生も交えて非常に活発に議論が行われていたけれど、ロシア語で交わされる活発な議論の前にはこちらは
完全に蚊帳の外という感じです。でもロシア語がある程度わかるようになればあの雰囲気にはいい刺激を
受けられそうな感じでした。
というわけで、、、早くロシア語しゃべれるようになりたいなあ。

ちなみに肝心の数学的内容はBethe algebraの定義まではなんとかついて行ってたのですが、その後の主定理
っぽい定理の主張が全く解読できずそこで完全に落伍しました。時間配分的にも今回の講演はBethe algebra
の紹介みたいな講演だった気がするので、今日の目的はいちおう果たしたと思うことにします^^;

(「〜という感じでした」とやたらあいまいな記述が目立ちますが、言葉も勝手もわからないので推測に推測
を重ねて書いた結果によるものです。)
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HSEに移りました

この11月からモスクワのHSE(ロシア国立大学高等経済学校数学学部)に移りました。
武部さんと同僚になります。僕が3人目の外国人教員になるようですが、そのうち2人は日本人なのでHSEで
は日本人はマイノリティの中では多数派です!
海外ですが研究上つきあいがあったり、話ができそうな方が多いので居心地が良さそうな感じがします。

先生方に挨拶をしに行ったりしたときにずいぶんと親身に話をしてくれる方が多いです。ロシア人は確かに
おしゃべりが好きなのかもしれない。もっともロシア人だけでなくてUKから来ている先生もかなり話す人
みたいでしたが。

実はまだ労働契約の手続きがちゃんと完了しておらず、まだこちらに来て間もないため右も左もわからない
状況です。この手の事務手続きはちゃんとやっておかないとロシアでは警察に拘束されかねないのであまり
ゆっくりしていられません。

HSEに来て驚いたことを箇条書きで
  • 就労ビザなのでImmigrationのときに質問責めにあうかと思っていたけどほとんど素通しだったのでひょうしぬけしました。
  • HSEのゲストハウスに部屋を借りているのですが、建物が数学学部と同じ建物なので通勤時間がdoor-to-doorで2-3分!(他の学部はモスクワ中にばらばらに散らばってるみたいなので非常に幸運)
  • その近くに外を歩いて3分程度の所にAshanという名前の巨大なショッピングセンターがあって生活に必要なものはなんでもそろってしまうし、ご飯を食べるところもいくらでもある。(今まで住んだところで下手をすると一番便利な環境かもしれません)
  • オフィスがFeigin, Finkelbergの両先生と相部屋でした。(数学的には非常に恵まれた環境ですが、プレッシャーを感じそう^^;)

相変わらずなモスクワの部分も
  • 空港まで修士の学生が迎えに来てくれましたが大学までの移動はやはり白タクだった。しかも運転が荒い。
  • モスクワの道は今も渋滞がひどいらしくロシア人がモスクワを悪く言うときにたいてい最初に挙がる気がします。そして車がみんな汚れている。
  • 駅の周りにキオスクという小さいお店がたくさん並んでるのは相変わらずです。
  • 大学の建物は外から見ると大きくて立派だけど中身はわりとぼろいです。でも暖房とかはしっかりしてるのでわりと快適。
  • どこに行ってもたいていの店で店員さんはロシア語しか通じません。

コスタ(ヨーロッパチェーン(?)のカフェ)に入ってアメリカーノを頼むだけなのにサイズの指定とかで店員
さんとの会話がままならず慌てるという経験を久しぶりにしました。韓国語もそんなにしゃべれるわけでは
ないのに最近はそんな言葉に不自由することがなかったので、外国語の問題に久しぶりに直面する感じです。
もっとも今回はもうポスドクとしての採用ではないので、言語の問題はむしろこれから授業をどうこなして
いくかのほうがずっと深刻なはず。演習の手伝いをすることになったのですが、そちらの報告もそのうち
書きたいと思います。
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韓国の滞在許可を更新

そろそろソウル大に来てから1年経つことになり、滞在許可の期限が近いので更新してきました。
9月末から海外出張(数学会)なので早めに更新しておかないと帰って来たときに入国を拒否されそうだったので早めに。

事務にビザを更新するための手続きを早めにしないといけないと思うんだけど、とメールしたらかなり迅速に必要な書類を用意してくれました。9月から新しいポスドクがUSから来るらしいので、もしかしたら事務も外国人のポスドク受け入れに慣れて来たのかもしれません。

滞在許可の延長のために必要な書類は
  • 定められた形式の申請書
  • パスポート
  • 外国人登録証(身分証明のカード)
  • 契約書など雇用を証明する書類
  • 手数料30000ウォン(出入国管理局3Fで印紙を買って申請書に張り付ける)
でしたが、契約書一式のコピーを事務で用意してくれたので(去年も外国人登録の時に書いた)申請書を適当に埋めて書類をオモッキョというところにある出入国管理局に持っていくだけで済みました。もっとも出入国管理局はいつも人が長い列を作っているところなので番号札を受け取ってから1時間以上待たされることになりますが。

去年外国人登録をしたときには再入国許可証の申請も同時にしたのですが、どうも制度が変わったらしく窓口の人に聞いてみたら「研究関係のビザ(E-3)の場合にはもう必要なくなった」と言われました。さらに前回はパスポートを取り上げられて10日くらい待たされた後にもう一度出入国管理局に取りに行かないといけなかったのですが、今回は外国人登録証の裏側に延長された期限が追記されただけで1日で済んでしまいました。なんか拍子抜け。

ついでなので去年やった韓国のビザの手続きについても書いておきます。

ソウル大にポスドクとして就職することが決まって、とりあえず大学側のオファーについての書類が送られてきました。「オファーを受けます」という意思表示のためにサインしたものを他の必要書類と一緒に送り返すと研究目的で大学に雇用されるためのビザ(E-3)を取得するための手続きを大学の事務でしてくれて、Visa Approval Numberという番号が通知されます。ビザの申請書にこの番号を書いてパスポートと一緒に大阪の領事館(か東京の大使館)に持って行けば1日くらいであっさりビザがもらえます。ただし念のためにオファーの書類を申請のときには持って行った方がいいかと思います。

ビザをもらえれば韓国に行ってちゃんと外国人のポスドクとして契約ができますが、ビザだけでは滞在できないので韓国で職を持つ外国人として滞在する許可をもらう必要があります。出入国管理局に上と同様に申請書と契約書やパスポートを持って行って外国人登録の申請をします。このときはパスポートを取り上げられた状態で10日ほど待たされてもう一回出入国管理局に出向いて外国人登録証という身分証明書と一緒に(再入国許可証を貼付けた)パスポートを返してもらいました。現在では再入国許可証が不必要になったらしいのでパスポートは取り上げられたりしないのかもしれません。

韓国に就職する人の参考になれば、と思って書いてみましたが韓国に就職する人がそもそもほとんどいないかもしれないですね。ドイツのビザ関係の手続きのほうが役に立つ人が多そうな気もするから今度書くかもしれません。

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あけましておめでとうございます

みなさま、あけましておめでとうございます。

今年は2月半ばから5月末までボンのMax Planck Instituteに長期滞在予定です。
同時期に関連分野の方で滞在される方も国内外含めてたくさんいらっしゃる
ようなので楽しみにしています。

今年ドイツを訪れる方とは、機会がありましたら是非ビールでも飲み交わしたい
です。さて、「乾杯」くらいはドイツ語で言えるようにしておかないと!
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ソウル大の冬

11月までは、日本より1月くらい季節が早い気がするな、程度だったのですが12月に入ってからソウルの冬が本格的に始まったようです。

ソウルの冬は雪はあまり降らないようで、降っても日本の雪国のような積もり方はしないみたいですが気温の低さは寒冷地に住んだことのなかった僕にとってはびっくりするくらいです。寒い日には最低気温が-15度くらいになりますし最高気温も-7度くらいの日があります。11月の間は寒い日で最低気温が-3度くらいだった気がするので12月になってから急激に寒くなった感じがあります。
もっとも本格的に寒くなったおかげで研究室は日中はセントラルヒーティングがつきっぱなしになるので11月よりむしろ肌寒さを感じることはないかもしれません。夜になるとセントラルヒーティングがいつのまにか消されるので不用意に数学に集中していると部屋が寒すぎて続けれらなることがあります。12月10日にセメスターが終わって食堂が19時には終わってしまったりするので日本にいるときのように夜9時を過ぎて大学に残っているのはあまり現実的ではないようです。

先ほども書いたとおりこちらのセメスターは12月前半で終わりになり冬休みに入るみたいです。次のセメスターは3月に始まります。日本(や欧米)とセメスターの期間がずれているのは冬が厳しいからかもしれません。後期セメスターの開始は9月からみたいです。

ソウルの冬は典型的には3日寒い日が続いたあとに4日暖かい日が続くという周期になるようで、三寒四温と言うのだと教えてもらいました(韓国語での発音もだいたいそのままです)。こちらの人の服装も日本での服装と比べてそんなに重武装というわけではないですが、インナーの防寒対策などはしっかりした方が良さそうです。寒い地方はだいたいそうだと思いますが、外がどれだけ寒くても部屋の中は初夏の陽気であることが多いのでこまめに服を脱いだりして調整しないと不用意に汗をかいてしまって風邪を引くかもしれません。

しかし冬の寒い地方ほどアイスクリームや冷たいビールが好きなのはわりと世界中で見られる傾向なんでしょうか?こちらのアイスクリーム専門店の多さにはびっくりします。
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韓国のビザや再入国手続き

明日から韓国へ来てからの初海外出張します。とは言っても古巣の京都なのですが。
せっかくなので韓国入国に関するビザ発行の手続きと海外出張の時の手続きについて少し。

まず、韓国のビザ事情ですが皆さんご存じの通り普通に3ヶ月以内の短期滞在の場合は特別なビザの申請の必要がありません。以下の記述は韓国の研究機関に雇われて長期滞在をする場合の話です。
僕の場合にはSNUへ採用が決まってから
(1) SNUからOffer letterが送られてきた。(2通。片方に署名した上でSNUに返送)
(2) SNUから送られてきた採用に関する書類フォームを書いてメールで返送。
(3) SNUの事務がビザのApproval numberの申請。
(4) SNUからApproval numberをメールで通知されてそれをもって大阪の韓国領事館にビザの申請。
(5) 翌日にビザの交付。
という感じでした。韓国の大学に雇用されることになっている人は雇用主を通してApproval numberを取得することでビザ発給に関する審査が簡略化される、ということらしいです。

上述の手続きで発給されるビザは1回限りの入国に関するビザなので、韓国に移った後でさらに「再入国許可申請」を取る必要があります。
オモッキョというところにある入出国管理局で在韓外国人用の身分証と一緒に申請することができます。申請するときに50000ウォンと結構高い金額を納めないといけないのですが、再入国許可証をもらうことによってようやく韓国の入出国が自由になります。なお、入出国管理局に申請する暇がない場合は空港で手続きすることで1回限りの再入国許可がもらえるらしいです。

ちなみに韓国には成人男性の兵役の義務がありますが、兵役を終えていないと正式なパスポートは発行されないので、それ以前に海外に旅行するときにはは短期間で失効する仮パスポートを申請することになるようです。兵役の義務があることは知っていてもそれが生活にどう影響するかについては全くの無知だったのでこの話をこちらの方から聞いたときは内心結構驚きました。
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SNUの食堂事情

前回からだいぶ間があきましたが、ここらでソウル大学の大学食堂について書いておこうと思います。

ソウル大学のキャンパスは広大なので、大学の食堂がかなりあちこちにたくさんあります。
それに加えて外部の経営のレストランとかもいくつもあります。前回も書いたとおりのソウル大学の立地条件では京都や東京、名古屋などにある大学みたいに昼ご飯を外に食べに行くことは結構大変なわけですが、その分キャンパス内に食べるところがたくさんあるので大量の胃袋を満たすことができるようになっているようです。

大学食堂にはどこの食堂でも日替わりの定食しかないようです。大抵は2-3種類のうちから選べるようになっています。驚くべきは定食の値段が3000ウォン(約230円)と格安なのに意外と豪華なメニューであることです。おそらく韓国料理の風習に従っているだけだと思いますが、主菜(と汁物)の他にキムチなどの副菜が必ず3品くらいは付いてきます。京大の学食だと副菜をつけていくとあっという間に500円を軽くオーバーするのでSNUの大学食堂のコストパフォーマンスにはかなり感動しました。



上の写真はわりと典型的なメニューの具体例です。実際に暮らしてみてはじめて知りましたが韓国料理はスープを食べることが多いみたいです。写真のスープは見るからに辛そうな色をしていますが、韓国料理には辛くないスープも結構たくさんあるようです。また大学食堂のメニューは外国人の利用者のことを配慮しているのか比較的辛さはマイルドに作られている気がします。
味のほうも十分に満足できるものだと思います。先程書いたとおり韓国料理にはスープの類が多いのですが、出汁の取り方が日本料理と似ているのか日本人の口に合うと思います。違うのは韓国は肉食文化なので日本より肉や骨からとる出汁を使うことが多いのと、日本人なら出汁と塩や醤油などだけで味付けするものにコチジャンなどの辛い味を加えることでしょうか。

日本人にとってうれしいことに韓国料理は麺類以外のメニューにはたいてい白いご飯がつきます。ついでに書くと味噌汁も結構ひんぱんに出てきます。(辛いものが苦手でなければ)食べ物が原因でホームシックにかかる危険がだいぶ軽減されると思います。また日本で食べるものはだいたいありますし、大学食堂でも出てきます。


カレーは韓国の学生にも人気メニューらしく行列ができていました。ちなみに写真を撮り忘れてますがカツカレーが出てきたこともあります。トンカツを日本より薄く作りますが大量に揚げてるとは思えないくらい衣がぱりっと揚がっていて結構おいしいトンカツでした。
もちろんいかにも学生に人気がありそうな韓国料理もでます。


普通のビビンパではなくて石焼ビビンパで出てきました。韓国料理で使う一人用鍋のことをトゥッペギと言うらしいですが、かなりポピュラーなもののようでたいてい定食メニューの片方はこのトゥッペギを使ったアツアツの主菜が提供されます。これのおかげでたった3000ウォンの定食がやたら豪華に見えます。
ちなみにこのビビンパは魚卵のビビンパでしたが味付けはウスターソースでしてたみたいでした。ビビンバと言えばコチジャンやごま油だと思っていたのでかなり衝撃でした。韓国のビビンパの扱いは適当に具材とタレを入れて混ぜたファーストフードなのかも。

上のメニューはどれも3000ウォンのメニューですが、1700ウォン(約130円)・2500ウォン・3000ウォン・4000ウォン・5500ウォン(約423円)のメニューがあるようです。どの値段のメニューが提供されるかは食堂によって決まっていますが、同じ値段のメニューでも食堂によって違うメニューが出てきます。あと当然毎日違うメニューが出ます。1ヶ月近く居ますが、まだ同じ主菜が出てきた事はないのでレパートリーは結構広そうです。

ちなみに韓国はマクドナルドのセットメニューが5500--6500ウォンくらいです。また韓国料理の軽食を出すチェーン店などに行くと5000ウォンも出せばお腹いっぱい食べることができます。なので大学食堂が韓国の相場からして極端に安いわけではないようです(それでも比較して十分安いですが)。

前述したとおり大学食堂には定食しかないのでメニューがなく、その日のメニューは食堂の入口のところに実物が展示してあります。さらにハングルだけでなく英語でメニューの簡単な説明が書いてあるので外国人の利用者にとってはかなりありがたいです。ハングルで書いてあるメニューと格闘しなくて済むのでこちらに引越してきた当初は相当に精神的負担を軽減してくれました。
しかし韓国料理はたまにコチジャンなどの調味料をセルフサービスにするのですが、それにはハングルでしか説明が書いていなかったりします。ハングルが読めない外国人の利用者はカンで適当に処理しているようです(ビビンパ用のコチジャンと豆腐用のタレを間違って使っている人を結構見ました)。


上の写真は自分自身の失敗例。ソロンタンという「辛くない」スープなのですが、自分で塩を入れて味をつけるスープだったのによくわかっていなかったので塩を入れないまま食べてしまいました。「出汁はよく出ているけどずいぶん味の薄いスープだな」とか思っていた自分が恥ずかしいです。その晩ネットを調べて自分のおかした間違いに気づきました。

そんなわけで韓国料理が口に合わなかったり外食がコストに見合わなければ自炊も覚悟していたのですが、外食ばかりの生活でも食費がぜんぜんかからないという現状です。自宅の近くにある学生寮の食堂は週末もオープンしていて、しかも大学食堂の中で一番おいしいという評判だったりするので非常にありがたい存在です。大学のキャンパス内から出なくても生活できるので広い意味でのひきこもりにならないかが少し心配ですが。

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ソウルに来て1週間

ソウルに来て1週間が経ち、それなりにソウル大の中には慣れてきたのでどういうところか書いてみようと思います。

ソウルは京都と同じで盆地にある都市なので周りは基本的に山で囲まれています。ソウル大はその南の端のGwanak山という山の麓にあるようです。キャンパスは南北に長く伸びていて、門のある北側が入口で盆地側、奥に行くほど山側になります。従って基本的には奥に行けば上り坂ということになります。しかし実際にはキャンパス内でかなり起伏が激しく、移動していると上ったり下りたりと山道を歩いている気分になります。

数理科学科はキャンパスの真ん中ぐらいに位置しており僕の住んでいるのはソウル大の(裏)門のあたりにある宿舎なので、この一週間は毎日のように数理科学科までてくてくと山道を歩いて通っていました。片道で20分強の山道を徒歩で歩くのでかなりいい運動になるくらいです。

京都大とかだと休み時間毎に学生が自転車でキャンパスを大移動する様子が見られますが、これだけ勾配の多いキャンパスではそれは厳しいようで学生は徒歩で移動するか(移動距離が長いときは)キャンパス内を循環するシャトルバスを使って移動しているようです。シャトルバスが通勤に使えるんじゃないかと思ったのですが、宿舎からバス停までがかなり距離があるので結局あまり役に立たないとわかりました。

ちなみにソウル大の最寄り駅は地下鉄のソウル大学入口駅とナクソンデ駅ですが、どちらも大学の門までたっぷり20分くらいは歩かされます。しかもその道もやはり坂道です。駅の周りは結構栄えていて食事を取れる場所もたくさんあるのですが、この距離を考えるとさすがに昼休みに駅まで昼ごはんを食べに行く人はあまり多くないと思われます。そんなわけで昼ご飯はみんな大学キャンパス内の食堂などで食べることになります。キャンパス内にはかなりたくさん食堂やレストランがあるので(ベトナム料理のレストランやビビンパの専門店なんてものまでありました)学生や職員が食堂に入りきらないというようなことはないみたいです。

そんなわけなので今後は、毎日午前中に20分強の道をてくてくと歩いて通い、昼ご飯を大学の食堂で食べ、午後も研究室に篭もり、遅くなったら夕ご飯も大学の食堂で取って、また20分の道を歩いて帰る、というような毎日になりそうな気がします。

ついでに書くと、今日は休日なのですが昼夜ともに大学の学生用寄宿舎の食堂で食べてしまいました・・・。

SNUの坂道
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