共同研究・競争的資金等の研究課題

2017年4月 - 2021年3月

タングステン中の空孔型欠陥による水素捕獲とその水素による成長促進効果の研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
17K06993
体系的課題番号
JP17K06993
配分額
(総額)
4,550,000円
(直接経費)
3,500,000円
(間接経費)
1,050,000円

タングステンは核融合炉のプラズマ対向材料として研究が進められている。タングステンは水素が殆ど溶解せず、高融点で耐摩耗性に優れている。しかし、プラズマ等の照射で作られる空孔型欠陥にはかなりの量の水素(水素同位体)が捕獲される可能性がある。単原子空孔中の水素については先行研究があるので、本研究では二原子空孔中の水素の安定構造や結合エネルギーを第一原理計算に基づいて計算した。さらに、他の金属と違いタングステンの二原子空孔は単原子空孔よりもエネルギー計算によると不安定であることが予測される特異な金属であることも併せて研究対象とした。
二原子空孔自身の安定性や二原子空孔に捕獲された水素原子の安定構造を詳細に計算した。また、水素の零点振動エネルギーを計算することで水素同位体による違いも調べた。計算は主に、第一原理の計算コードであるVASPを使った。また、計算機は九州大学の大型計算機や量研機構の計算機を用いた。
タングステンの二原子空孔は<111>方向の配置が安定である。水素を捕獲してもその構造は変わらない。また、水素はO-siteと呼ばれる位置の近傍が安定であるが、タングステンでは二原子空孔の接合部にあるO-siteの方が水素を引き付ける力が強い。そのため接合部に優先的に水素が配置されることがわかった。これより、水素の最安定構造の法則性が見えてきた。
また、二原子空孔自身はエネルギー計算によると単原子空孔よりも不安定である。しかし、水素を捕獲することで著しく安定化する。本研究で予測していた水素による空孔型欠陥の安定化の証拠が見えてきた。さらに、水素同位体によって安定化の程度が違い、重い水素同位体(重水素や三重水素)の方が通常の水素よりも安定化に大きく寄与する。これは燃料として水素同位体を使う核融合炉の材料研究にも関与する現象と考えられる。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-17K06993
ID情報
  • 課題番号 : 17K06993
  • 体系的課題番号 : JP17K06993