基本情報

所属
熊本大学 大学院生命科学研究部附属グローバル天然物科学研究センター 准教授
学位
薬学修士(2001年4月 熊本大学)
薬学博士(2006年7月 熊本大学)

J-GLOBAL ID
200901050051294870
researchmap会員ID
1000327650

外部リンク

【研究の実績と特色】

1. 難治性肺疾患の創薬薬理学・トランスレーショナル研究

・難治性の肺疾患である慢性閉塞性肺疾患(COPD)および嚢胞性線維症(CF)の病態解明と治療戦略の確立に向け、分子機構から実験動物モデル、さらに臨床に還元可能なエンドタイプ解析まで、一貫した研究を心掛けてきた。まず、原因菌による感染性気道炎症に注目し、自然免疫受容体TLR2が閉塞性肺疾患の起因菌により活性化され、その発現が誘導されることを報告した(Proc Natl Acad Sci. 2001; J Biol Chem. 2002; etc.)。さらに、CF患者においてはTLR2の恒常的な過剰発現と機能亢進がCF炎症に寄与することを明らかにし、感染性炎症制御の新たな治療ターゲットを提示した(FASEB J. 2006; Leukemia Res. 2007; BMC Mol Biol. 2008; etc.)。また、上皮自然免疫に関連して、重要なIL-15シグナルの構造学的分子基盤の解明やTLR3の新規機能に関する解明なども行なった(Nat Immunol. 2007; Mol Cell Biol. 2008; etc.)。

・物質輸送を担う輸送体分子に着眼し、自然発症型COPDモデルであるC57BL/6J‐βENaC‐Tgマウスを確立し、粘液貯留を安定的に呈する当該モデルに関する薬理学的基盤構築を行なった(Sci Rep. 2016; etc.)。さらに、ヒトとマウスの肺機能に関する疫学・遺伝学・実験科学を融合したプロジェクトを開始し、亜鉛トランスポーター、ビタミンC、DsbA‐L、T3、SIGIRRなどが保護的に働くことを明確化した(Sci Rep. 2016; EBioMedicine. 2018; Br J Pharmacol. 2021; Int J Mol Sci.  2022; Antioxidants. 2023; etc.)。現在は、COPDの多様なエンドタイプおよび併存疾患(糖尿病、肥満、肺癌、歯周病等)が病態に及ぼす影響を包括的に解明し、創薬標的の探索への足掛かりを築く研究を実施中である。
 
2. 難治性腎疾患およびアミロイド疾患の創薬薬理学・トランスレーショナル研究

・タンパク質のミスフォールディングによる難治性疾患という視点から、腎疾患であるアルポート症候群(AS)やアミロイド疾患の病態解明と治療戦略の確立に向けた研究を、特に細胞内品質管理機構に着目し実施してきた。

・ATTRvアミロイドーシスの原因タンパク質トランスサイレチン(TTR)の変異体特異的な新たな品質管理経路の解明した(Mol Cell. 2012; etc.)。

・AS原因タンパク質IV型コラーゲン(COL4a3/4/5)の変異体の異常な品質管理を是正し、治療に繋げる薬物の探索のin vitroプラットフォームを構築し(Cell Chem Biol. 2018; etc.)、ASモデルマウスを用いたin vivo研究へと発展させている。

・当該疾患以外にも、近年では、熊本大学薬学部で2017年より実施している天然物創薬プラットフォームUpRod(文部科学省地域イノベーションエコシステム形成プログラム、H27-R3)のプロジェクトマネージャーとして、疾患対象を拡大した創薬薬理研究を実施している(Sci Rep. 2020; Br J Pharmacol. 2021; etc.)。現在は、創薬社会実装の一環として、腎疾患研究の成果に基づき、創薬ベンチャーGALTS Pharma(代表取締役、甲斐広文)の技術顧問としても貢献している。 


3. モデル生物Cエレガンスの健康寿命指標を活用した創薬薬理学・社会実装化・産学連携研究

・現代社会においては、動物愛護やSDGsの観点から、クルエルティフリーに対応した動物実験代替法の構築が急務である。本申請者は、実験モデル生物として、長年、医学・生物学研究で汎用されるCエレガンス (線虫) を用いた機能性・安全性評価法の開発を積極的に推進している。具体的に、Cエレガンスの一生を、ヒトの一生と見立てて、健康(フレイル)への影響力を数値化する技術C-HASの開発に成功した(J Pharmacol Sci. 2021; GeroScience. 2024; BBRC. 2025; J Pharmacol Sci. 2025; etc.)。これまで、C-HASを活用した基礎研究の他、被検物質や遺伝子変異による健康影響力の「見える化」技術を基盤とした、大学発スタートアップ株式会社C-HASプラスを設立し、Cエレガンスや健康に影響を与える天然資源の探索に資する社会実装化・産学連携研究にも精力的に取り組んでいる。

 

4. 特記事項

・これまでに、自身が代表者として、基盤研究 (B) 1件、若手研究 (B) 5件、基盤研究 (C) 2件、挑戦的萌芽研究1件などの科研費に採択され、また、当該研究提案に関連する製薬会社や健康食品会社との産学連携研究やベンチャーでの研究活動(C-HASを活用した天然素材の健康寿命評価および天然物バンクに関する企業共同研究)も実施中である。

・薬学会医療薬科学部会若手世話人、トランスポーター研究会世話人、薬学教育協議会薬科学担当教員会議委員長に就任し、これまでに大型の学会を2件主催し、当該分野を牽引している立場にある。

・薬理学会では評議委員であるとともに、J Pharmacological Science Section Editor、研究推進委員会委員、将来構想委員会委員などを遂行中である。

・大学院生命科学研究部附属グローバル天然物科学研究センターにおいては、文部科学省大型事業「有用植物×創薬システムインテグレーション拠点推進事業」 (2017-2022、年間約2億円) のプロジェクトマネージャー (PM) 兼研究者として、世界各地の有用植物や天然物を用いたHTSスクリーニングの実施や成分単離・同定と薬理活性評価に携わり、新たな成果を上げている (AMED創薬基盤推進研究事業. 2021分担者; Sci Rep. 2020; J Biol Chem. 2019; Molecules. 2019; Biol Pharm Bull. 2019; BMC Complement Altern Med. 2018)。

・「C-HAS」に関する数多くのビジネスコンテストで受賞し、2022年4月1日より、熊本大学認定ベンチャーC-HASプラスの立ち上げを行い、現在、当該企業の取締役社長を兼務しており、研究と社会実装の両輪経営に取り組んでいる。https://c-hasplus.co.jp

・熊本大学広報誌「熊大通信」編集委員を15年間務め、2023年4月より、熊本大学副理事(広報担当)に就任し、大学広報・ブランディング推進に取り組んでいる。

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UpRod
https://youtu.be/Tkt3LfQDhqQ

C-HAS
https://www.youtube.com/watch?v=oexCVMWGPX4&t=1s

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【教育の実績と特色】

・熊本大学薬学部・大学院薬学教育部において、数多くの講義を担当している(病態生理解剖学、免疫学、ゲノム創薬科学実習、科学英語プレゼンテーション演習、他)。講義や実習の原則は、「受動から能動(主体)に」「百聞よりも一見に」という教育理念であり、従来の知識重視型教育から、思考・実践型教育へのシフトを積極的に推進してきた。

・約25年間の大学環境において、50名以上の博士号取得学生の輩出に貢献するとともに、学生や大学院生の早期海外学会発表や留学支援にも注力し、国際的な視野を養わせる環境を整備している。

・研究室では、朝7時30分の出勤をはじめとした日常の厳格な時間管理の下、論文・研究進捗セミナーを実施し、学生の主体的な学びを促す多彩なプログラムを企画・実施している。

・非常勤講師としての経験、中高生や一般市民との対話、大学広報副理事や大学発スタートアップでの活動など、学内外での多様な教育・普及活動を通じ、科学の面白さや重要性を広く伝えてきた。これにより、学生は単に理論を学ぶだけでなく、アントレプレナー思考や実践的な課題解決能力を養い、将来の社会においてリーダーシップを発揮できる人材へと成長する基盤を得ることができると信じている。

 

 

 


経歴

  18

受賞

  14

論文

  200

MISC

  19

書籍等出版物

  4

講演・口頭発表等

  563

担当経験のある科目(授業)

  19

共同研究・競争的資金等の研究課題

  21

産業財産権

  9

社会貢献活動

  6

メディア報道

  14

その他

  1