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統計コミュニティは統計不正にどう対応したか: 毎月勤労統計調査問題における政府・専門家・非専門家のはたらき (『東北大学文学研究科研究年報』73号)
03/20

毎月勤労統計調査における東京都での対象事業所の不正抽出問題が騒がれてから5年。当時はよくわからなかった問題点が、その後の研究を通じてわかってきました。政府や統計専門家のほか、日本の公的統計に興味を持つ人々がこの問題の解明にどのように貢献してきたのか(しなかったのか)をまとめた論文を、『東北大学文学研究科研究年報』(73号) に掲載しました。田中重人 (2024)統計コミュニティは統計不正にどう対応したか: 毎月

事典項目の執筆:「公的統計の利用」『家族社会学事典』丸善出版 (2023年12月)
03/10

日本家族社会学会 (2023)『家族社会学事典』(丸善出版) の項目「公的統計の利用」(146-147頁) を執筆しました:田中重人 (2023)「公的統計の利用」日本家族社会学会『家族社会学事典』丸善出版 (pp. 146-147) http://tsigeto.info/23kISBN: 978-4-621-30834-9出版社ページ: https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b305112.html公的統計 (すなわち政府その他の公的機関が作成する統計) について、それを研究において利用する

日本のCOVID-19対応における多義語「クラスター」の用法: 2020年の記録 (『文化』86巻3/4号)
2023/09/08

日本の新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 対応を特徴づける用語である「クラスター」について、この用語の初出である2020年2月からおよそ1年間の用法の変遷を記述した文章を『文化』(86巻3/4合併号) に掲載しました。田中重人 (2023)日本のCOVID-19対応における多義語「クラスター」の用法: 2020年の記録文化 86(3/4): 239-219, 208http://tsigeto.info/23ahttp://tsigeto.info/Tanaka-2023-Bunka.pdf (印刷版PDFファイル)東北

毎月勤労統計調査問題における政府と専門家:データに基づく批判の不在 (社会政策学会第144回大会, 2022-05-14)
2022/05/14

Full paper and related information: http://tsigeto.info/22y [2022-05-06追記]Paper title: 毎月勤労統計調査問題における政府と専門家:データに基づく批判の不在Author: 田中 重人 (東北大学)Abstract: 政策の合理性は、データと論理に基づく批判的コミュニケーションによって支えられる。そのようなコミュニケーションの担い手としては、政府、専門家、非専門家の3者がありうる。本研究では、2018年末に不正が発覚した厚生労

クラスター対策とは何だったのか: 日本のCOVID-19対応にみる非合理的コミュニケーション (関西社会学会第72回大会, 2021-06)
2021/06/05

報告資料スライド: http://tsigeto.info/21z-slide.pdfPaper title: クラスター対策とは何だったのか: 日本のCOVID-19対応にみる非合理的コミュニケーションAuthor: 田中 重人 (東北大学)Abstract:2020年2月25日に厚生労働省が「クラスター対策班」を設置して以来、「クラスター対策」は日本のCOVID-19対応を特徴づけるものとされてきた。これは感染症法15条に基づく「積極的疫学調査」の実施に関わる事柄である。文献を収集して
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高校で授業:人口転換と家族制度 (2021-11-02)
2022/03/02

下記の授業を昨年11月2日にオンラインでおこないました (クラスを分けて2回実施)。日時: 2021年11月2日場所: 仙台青陵高校「一日大学」授業題目: 人口転換と家族制度内容: 近代化につれて死亡率と出生率が下がっていく現象を、「人口転換」と呼びます。人口転換の結果、現在の先進国のほとんどで高齢化と少子化が進み、それにともなって社会制度のさまざまな側面で変革をせまられてきました。この授業では、家族(=夫婦関係と親子

高校で授業:人口転換と家族制度 (2016-03-22)
2016/03/22

日時: 2016年3月22日 場所: 和歌山県立桐蔭高等学校 行事名: 第16回「桐蔭総合大学」 授業題目: 人口転換と家族制度 内容: 近代化につれて死亡率と出生率が下がっていく現象を、「人口転換」と呼びます。人口転換の結果、現在の先進国のほとんどで高齢化と少子化が進み、それにともなって社会制度のさまざまな側面で変革をせまられてきました。この講座では、家族(=夫婦関係と親子関係で結ばれた人々)に関する制度(結婚・扶養

「精読」タスク
2014/11/22

文章を細かいところまでちゃんと読むためのタスク:【事前準備】自分の興味ある本から4-9段落程度をコピーする。A3用紙の中央にうまく配置する。必要があれば図や表なども一緒にコピーしておく。上下左右に大きく余白をとること。【授業中課題】各段落の「キーセンテンス」を蛍光ペンでマーク。わからない語・句を○でかこむ。わからない文・節に下線を引く。必要に応じて、これらの○や下線に番号や記号をつける。これらについての

高校で授業:現代日本社会の言語状況と多文化共生 (11/2)
2011/11/02

仙台向山高校に授業にいくことになった。11/2 (水) 午後。 「現代日本社会の言語状況と多文化共生」というタイトルで、一見「普遍的」な理念を持つ社会が抱える根本的な問題について講義する予定。 (以下は 2011-11-01 追加) 言語科学講座「現代日本社会の言語状況と多文化共生」(東北大学文学部・田中重人) 日付 = 11/2 場所: 宮城県立仙台向山高等学校 時間: 12:55-14:30 方式: 質疑・課題を交えた講義
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東北大学文学部の新年度行事と授業開始 (2021年4月)
2021/04/06

文学部サイトに、新学期授業関係のお知らせが出ています。https://www.sal.tohoku.ac.jp/jp/news/covid19.html文学部学年暦、1学期時間割・講義室 (Google Classroom クラスコード) 一覧https://www.sal.tohoku.ac.jp/jp/education/activity/全学教育関連の通知http://www2.he.tohoku.ac.jp/zengaku/zengaku_info_g.html文学部新2年生オリエンテーション (4/7 10:30- Meet)https://www.sal.tohoku.ac.jp/media/files/_u/topic/file

東北大学卒業式 (3/25)
2021/03/25

3月25日10:00〜 学位記授与式が仙台市体育館でありますが、COVID-19対策のため、出席者は狭く限定されています。東北大学「学位記授与式の開催方式変更について」(3/21): https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2021/03/news20210321-01.html動画が配信される予定です (10:00-):http://www.tohoku.ac.jp/japanese/graduation/2021/文学部・文学研究科では、研究室代表者および博士学位取得者への伝達式だけおこないます:学部: 14:00

東北大学文学部2021年度前期授業について
2021/03/25

2021年度1学期の授業は、「対面授業にオンラインを併用」する原則でおこないます。ただし、受講生がじゅうぶんな間隔をとって着席できるように計画すると教室数が不足するため、対面方式がのぞましい授業を優先的に配置し、残りの授業はオンラインでおこないます。また、最初の2週間 (4月23日まで) は、学生の授業選択を容易にするため、すべての授業を原則オンラインでおこないます。(http://www.sal.tohoku.ac.jp/media/files/20

学生が利用できる東北大学川内キャンパス内の教室
2020/06/04

自宅でのオンライン授業受講がうまくいかない学生のために、大学で無線LANを利用して受講できるよう、川内キャンパスのいくつかの教室を利用可能にしています。川内北キャンパス講義棟(A, B, C棟)の教室http://www2.he.tohoku.ac.jp/zengaku/pdf/20200521.pdf文学部第1・第2教室 (文学部・文学研究科学生に開放)https://www.sal.tohoku.ac.jp/media/files/_u/topic/file/2gld4i1rt1.pdfいずれも、平日8:30~17:50、自宅ネット

学びの継続のための学生支援緊急給付金 (Web申請締切:6/3)
2020/06/03

「学びの継続」のための「学生支援緊急給付金」申請の案内:https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2020/05/news20200527-00.html 「新型コロナウイルス感染症」拡大の影響で学業継続に支障をきたす学生を対象に、国が緊急で支援をおこなうもので、返還の必要はありません。・6月3日までにWEBから申請フォームにより申請 (DCメールアドレスが必要)・その後、申請書類等を簡易書留にて6月10日までに郵送詳しくは上記Webページをごらんく
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統計コミュニティは統計不正にどう対応したか: 毎月勤労統計調査問題における政府・専門家・非専門家のはたらき (『東北大学文学研究科研究年報』73号)

毎月勤労統計調査における東京都での対象事業所の不正抽出問題が騒がれてから5年。当時はよくわからなかった問題点が、その後の研究を通じてわかってきました。政府や統計専門家のほか、日本の公的統計に興味を持つ人々がこの問題の解明にどのように貢献してきたのか(しなかったのか)をまとめた論文を、『東北大学文学研究科研究年報』(73号) に掲載しました。

田中重人 (2024)
統計コミュニティは統計不正にどう対応したか: 毎月勤労統計調査問題における政府・専門家・非専門家のはたらき
東北大学文学研究科研究年報 73:198-169.
http://hdl.handle.net/10097/0002000821
http://tsigeto.info/24a

【要約】
公的統計の不正が長い間隠されてきた事例が、この数年で複数みつかった。これらの問題の検証にあたり、日本の統計コミュニティ、すなわち統計に対する関心とそれをあつかう能力および相当の日本語能力を備える人々は、じゅうぶん貢献したようにはみえない。それはなぜか。本稿は、厚生労働省が「毎月勤労統計調査」(全国調査) の労働者数推計に2018年から誤った方法を持ち込んだ問題をあつかう。2018年以降の文献を検討した結果、政府内でこの統計を審査した各種委員会も、政府外の統計専門家も、厚生労働省が用意した資料と説明に依拠していたため、推計方法変更とそれによる偏りの徴候を見逃していたことがわかった。コミュニティ中心部を占める専門家たちは、政府内統計担当者の主張に非批判的であり、公開データで独自の検証をおこなうことなく追認してきたのだ。この問題に関して、日本の統計コミュニティは、周辺部にいる非専門家を別とすれば、データに基づく検証を軽視してきたといえる。

【目次】
1. 統計コミュニティとその役割
- 1.1. 「私物」としての公的統計
- 1.2. 公的統計はなぜ「私物」でありうるのか
- 1.3. 「統計コミュニティ」とは
2. 毎月勤労統計調査問題と本稿の課題
- 2.1. 母集団労働者数推計に関する層間移動事業所のウエイトの変更
- - 2.1.1. 毎月勤労統計調査の母集団労働者数推計の概要
- - 2.1.2. 層間移動事業所のあつかい
- - 2.1.3. 2018年のウエイト計算方法変更
- - 2.1.4. 誤った再集計による過去データへの波及
- 2.2. 本稿の課題
3. 非専門家による指摘
- 3.1. 山田正夫の指摘
- 3.2. TATの指摘
- 3.3. 明石順平の指摘
4. 統計専門家の対応
- 4.1. 松本健太郎の記事
- 4.2. 日本統計学会「公的統計に関する臨時委員会報告書」
- 4.3. その他のデータ分析例
- 4.4. 田中重人の指摘
5. 政府の活動
- 5.1. 厚生労働省
- 5.2. 毎月勤労統計調査等に関する特別監察委員会
- 5.3. 統計委員会
- - 5.3.1. ベンチマーク更新時のギャップの検討
- - 5.3.2. 抽出率逆数に関する資料
- - 5.3.3. 時系列比較のための推計値
- 5.4. 厚生労働省の有識者懇談会
- 5.5. 厚生労働省「毎月勤労統計調査の改善に関するワーキンググループ」
6. 議論
- 6.1. 結果のまとめ
- 6.2. 公的統計と統計コミュニティの未来

【補足】
(1) 計算に使ったデータとスクリプト、および図にプロットしたデータは http://doi.org/10.17605/OSF.IO/RS8T7 から入手できます。
(2) 解説を https://remcat.hatenadiary.jp/entry/20240319/24a に書きました。

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事典項目の執筆:「公的統計の利用」『家族社会学事典』丸善出版 (2023年12月)

日本家族社会学会 (2023)『家族社会学事典』(丸善出版) の項目「公的統計の利用」(146-147頁) を執筆しました:

田中重人 (2023)「公的統計の利用」日本家族社会学会『家族社会学事典』丸善出版 (pp. 146-147).  http://tsigeto.info/23k
ISBN:978-4-621-30834-9
出版社ページ: https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b305112.html

公的統計 (すなわち政府その他の公的機関が作成する統計) について、それを研究において利用するための原則と注意事項を、「公的統計の目的と目的外利用」「個人情報の管理と匿名化」「集計表」「メタデータ」の4項目をとりあげて説明しました。公開される集計を利用する方法と、ミクロデータを利用する方法 (日本の統計法の規定では匿名データ、調査票情報、あるいはオーダーメード集計) の両方をふくみます。

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日本のCOVID-19対応における多義語「クラスター」の用法: 2020年の記録 (『文化』86巻3/4号)

日本の新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 対応を特徴づける用語である「クラスター」について、この用語の初出である2020年2月からおよそ1年間の用法の変遷を記述した文章を『文化』(86巻3/4合併号) に掲載しました。

田中重人 (2023)
日本のCOVID-19対応における多義語「クラスター」の用法: 2020年の記録
文化 86(3/4): 239-219, 208
http://tsigeto.info/23a
http://tsigeto.info/Tanaka-2023-Bunka.pdf (印刷版PDFファイル)

東北大学の機関リポジトリ TOUR https://tohoku.repo.nii.ac.jp で公開されるはずですが、9月18日まで新規登録が停止 (https://www.library.tohoku.ac.jp/news/2023/20230609.html) しているため、しばらくかかる見込みです。その代わりに、印刷版PDFファイルを http://tsigeto.info/Tanaka-2023-Bunka.pdf で公開しています。

 

【要約】
「クラスター」は、2020年初頭以降の新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) への日本の対応を特徴付ける用語である。この用語の2020年2月から2021年1月までの用法を、政府文書やマスメディアによる報道などの関連文献から収集した。

その結果、政府と専門家が2020年2月末から3月上旬にかけてこの用語を使い始めたときには、すでに、ひとりから大勢への感染 (A)、拡大する可能性のある感染連鎖 (B)、1か所で生じる大規模感染 (C)、という3つの意味が共存していたことがわかった。その後、Aは姿を消し、BとCが残った。保健所による積極的疫学調査では、「クラスター」は一貫してBの意味である。一方、自治体は、すくなくとも2020年6月以降は、5人以上が感染したという具体的な基準で、意味Cを使用している。日本政府は、いったんはそれとおなじ意味で「クラスター」を使用するようになったが、その後、意味Bを併用するようになり、さらにCの意味を拡張して、4人未満の小規模な感染をふくめて「クラスター」と呼ぶ (意味C') ようになった。

このような用法の変化は、政府とそれに関連する専門家がCOVID-19に対応するためにとってきた戦略に潜在的な変化が生じたことを反映している。彼らは、COVID-19流行の初期段階においては、少数のスーパースプレッダーによる大規模感染に焦点を当て、それを「クラスター」ということばであらわしていた。しかし、流行が長期化する中で、対策の焦点は、小規模な感染の連鎖に移っていった。2020年7月以降、彼らは、日常的な活動 (特に飲食) の感染リスクを判断するために、小規模な感染の事例を「クラスター」と呼び、その情報を収集するようになった。そこでは、「クラスター」はもはや対策の対象となる脅威そのものを指すのではなく、脅威につながる可能性のある行動の情報を現場から集めるために便宜的に使うことばとなっている。

【目次】
1. 疫学における「クラスター」
2. COVID-19第1波: 「クラスター」概念の創出と拡散
- 2.1. 「クラスター」の登場
- 2.2. 積極的疫学調査における「クラスター」
- 2.3. 「集団感染」と「クラスター」
- - 2.3.1. 厚労省による「集団感染」「クラスター」の解説 (2月29日)
- - 2.3.2. 専門家会議「見解」(3月2日、3月 9日)
- - 2.3.3. 日本公衆衛生学会「クラスター対応戦略の概要」(3月10日)
- - 2.3.4. 厚労省「全国クラスターマップ」問題 (3月15日)
- 2.4. 第1波後半の二重構造
- 2.5. 第1波における3種の「クラスター」
3. COVID-19第2波: 「クラスター」の小規模化
- 3.1. FETP「クラスター事例集」
- 3.2. 小規模感染事例をふくむ「クラスター等」
- 3.3. 第2波における「クラスター」定義の変容
4. COVID-19第3波: 質的把握の重視
- 4.1. 「クラスター」事例ヒアリング
- 4.2. 「集団感染」の小規模化と会食への警戒
- 4.3. 複数感染事例としての「クラスター」定義
- 4.4. 緊急事態宣言と「クラスター」集計基準の再変化
- 4.5. 第3波における「場面」の質的把握
5. まとめ

【補足】
(1) 最初のページ (p. 239) 「10か月あ」と「まりを対象に」の間で改段落されていますが、これはまちがいで、本来はそのままつづいているはずところです。あとで何らかのかたちで訂正が出ると思います。
(2) 論文に盛り込めなかったことの補足を https://remcat.hatenadiary.jp/entry/20230907/23a#diss に書きました。

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「3密」概念の誕生と変遷: 日本のCOVID-19対策とコミュニケーションの問題 (『東北大学文学研究科研究年報』70号)

「3密」ということばが使われはじめてからちょうど1年。このほど、このことばの来歴と変遷をたどった文章を『東北大学文学研究科研究年報』(70号) に掲載しました。

田中重人 (2021)
「3密」概念の誕生と変遷: 日本のCOVID-19対策とコミュニケーションの問題
東北大学文学研究科研究年報 70:140-116.
http://hdl.handle.net/10097/00130599
http://tsigeto.info/21a

【要約】
日本の新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 対応を特徴づける概念である「3密」「3つの密」について、その創出と変容の過程を調べた。政府・専門家による文書を探索した結果、つぎのことがわかった。(1) 換気が悪く、人が多く、近距離での接触があるという3条件すべてを満たす状況を回避すべきという提言が公表されたのが2020年2月29日。(2) これら3条件に「密閉」「密集」「密接」という名称があたえられ、まとめて「3つの密」ということばができたのが3月18日。(3) 3条件が同時に重なった場を「3つの密」と呼ぶ定義があたえられたのが4月1日。(4) 条件が1つでもあれば「3つの密」と呼ぶ定義に変更されたのが4月7日。(5) この定義変更について説明・広報はなく、変更後の定義にしたがうことが徹底されているわけでもない。(6) 3密回避の方針は従来と変わっていないとのメッセージが政府と専門家の文書にふくまれるため、定義変更があったことが一般的に認知されず、「3密」が何を指すかについての解釈に齟齬が生まれる結果になっている。

【目次】
1. 「3密」概念をめぐるコミュニケーション問題
2. 課題と方法
3. 資料からわかる時系列
- 3.1. 前史
- 3.2. 厚生労働省Q&A
- 3.3. 専門家会議3月2日「見解」
- 3.4. 「3つの条件が重なった場」
- - 3.4.1. 専門家会議3月9日「見解」
- - 3.4.2. 専門家会議3月19日「状況分析・提言」
- 3.5. 「3 (つの) 密」
- - 3.5.1. 首相官邸「3つの「密」を避けて外出しましょう」
- - 3.5.2. 「3つの密」から「3密」へ
- - 3.5.3. 専門家会議4月1日「状況分析・提言」
- 3.6. 緊急事態宣言と定義変更
- - 3.6.1. 対策本部3月28日「基本的対処方針」とその審議過程
- - 3.6.2. 諮問委員会4月7日会議
- - 3.6.3. 「基本的対処方針」4月7日改正
- 3.7. 「3密」と「ゼロ密」
- 3.8. 専門家の態度の変化
4. 議論
- 4.1. 「3密」の定義とその変遷
- 4.2. 政府は何を要請していたか
- 4.3. 科学的根拠
5. 結語

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Preprint 「「3密」概念の誕生と変遷: 日本のCOVID-19対策とコミュニケーションの問題」

「3つの密」「3密」という概念が生まれて変質してきた過程について、 https://remcat.hatenadiary.jp/entry/20200921/3m で紹介した資料等を基にした論文を書きました。OSF Preprints でとりあえず公開しています:

Tanaka Sigeto. 2020. 「3密」概念の誕生と変遷: 日本のCOVID-19対策とコミュニケーションの問題. OSF Preprints. October 3. http://doi.org/10.31219/osf.io/25ba6
(The Emergence and Modification of the Concept of "(Overlapping) Three Cs": A Problem in Public Communication in Japan's Coronavirus Disease (COVID-19) Response)

目次

1. 「3密」概念をめぐるコミュニケーション問題
2. 課題と方法
3. 資料からわかる時系列
4. 議論
5. 結語

 

要約

日本の新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 対応を特徴づける概念である「3密」「3つの密」について、その創出と変容の過程を調べた。政府・専門家による文書を探索した結果、つぎのことがわかった。(1) 換気が悪く、人が多く、近距離での接触があるという3条件すべてを満たす状況を回避すべきという提言が公表されたのが2020年2月29日。(2) これら3条件に「密閉」「密集」「密接」という名称があたえられ、まとめて「3つの密」ということばができたのが3月18日。(3) 3条件が同時に重なった場を「3つの密」と呼ぶ定義があたえられたのが4月1日。(4) 条件が1つでもあれば「3つの密」と呼ぶ定義に変更されたのが4月7日。(5) この定義変更について説明・広報はなく、変更後の定義にしたがうことが徹底されているわけでもない。(6) 3密回避の方針は従来と変わっていないとのメッセージが政府と専門家の文書にふくまれるため、定義変更があったことが一般的に認知されず、「3密」が何を指すかについての解釈に齟齬が生まれる結果になっている。

The concept of "three Cs" (situations characterized by three conditions of closed space with poor ventilation, crowding, and close contact with a short distance) has played an important role in Japan's COVID-19 response. The government and experts have employed this concept to guide people in avoiding such situations in order to prevent outbreaks. To investigate the emergence and modification of this concept, the author traced government documents. The findings were as follows. (1) On February 29, 2020, the government, for the first time, appealed to the public to avoid places with the three overlapping conditions. (2) On March 18, a new Japanese phrase was coined that was later translated as "the (overlapping) three Cs." (3) On April 1, experts defined the term as a place that satisfied all the three conditions. (4) On April 7, the government modified the definition to include places with at least one of the three conditions. (5) However, the government and experts have not explained the difference between the two definitions to the public. (6) Rather, they insist that their policy on the need for avoiding these three conditions has been consistent and unchanged. Their conduct has led to miscommunication and misunderstanding among the public.

 

追記 [2021-03-19]

つぎのかたちで公刊しました:

田中重人 (2021)
「3密」概念の誕生と変遷: 日本のCOVID-19対策とコミュニケーションの問題
東北大学文学研究科研究年報 70:140-116.
http://hdl.handle.net/10097/00130599
http://tsigeto.info/21a

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感染症対策「日本モデル」を検証する: その隠された恣意性 (『世界』934号)

岩波書店発行の月刊誌『世界』2020年7月号 (=934号) の特集1「転換点としてのコロナ危機」に、つぎの小文を寄稿しました。

感染症対策「日本モデル」を検証する: その隠された恣意性
http://tsigeto.info/20b

本稿で「日本モデル」と呼んでいるのは、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の2020年4月1日「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(第2回) に出現した用語で、「市民の行動変容とクラスターの早期発見・早期対応に力点を置いた日本の取組」をあらわすものです。

本稿では、その前提となった、少数の感染者がいわゆる「3密」の状況で大量の2次感染を起こすという想定を検証します。根拠となった2020年2月26日までの感染状況の分析結果と、専門家が改変して説明に使用してきたグラフを検討し、恣意的な仮定に基づいた解釈がおこなわれていたこと、別の仮定を置けば日本モデルは支持できなくなることをあきらかにします。(https://remcat.hatenadiary.jp/entry/20200408/making などとほぼおなじ内容です。)

さらに、新型コロナウイルス感染症に関して、本件以外にも疑わしいデータが政策判断に使われてきたことを指摘し、第三者による批判・検証が可能な情報を公開するように主張します。

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7月21日(日)連続勉強会:「国難」のなかのわたしたちのからだ 第4回「人口政策に組み込まれた「不妊」」(東京麻布台セミナーハウス)

「少子化対策」という文脈で実施される不妊〝治療〟支援。「妊活」だけでなく、近年では「卵子の老化」キャンペーンに煽られた「卵活」も生じています。不妊への不安につけこむ医療とその関連産業やメディア、早期の妊娠・出産を促す政治勢力の動きは、私たちの意識、行動、選択に何をもたらしているでしょうか? 仕掛けられた世界一の不妊〝治療〟大国ニッポン、その現状を探ります。


  • 日時: 2019年7月21日(日) 14:00 - 16:30
  • 会場: 東京麻布台セミナーハウス (大阪経済法科大学) 2階 大研修室
  • 参加費: 500円(学生・非正規雇用の方などは300円)
  • 当日参加も可ですが、準備の都合上、なるべく下記へお申込みをお願いします

プログラム

  • 報告1.鈴木りょうこ:科学・ビジネス・政治がつくり出す「生殖」市場
  • 報告2.柘植あづみ:「卵子の老化」と卵子提供によって子どもをもつこと
  • フロア討議

主催: 高校保健・副教材の使用中止・回収を求める会

共催: リプロダクティブ・ライツと健康法研究会

勉強会案内URL:https://remcat.hatenadiary.jp/entry/20190517/seminar4

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5月11日(土)連続勉強会:「国難」のなかのわたしたちのからだ 第3回「優生保護法の負の遺産」(東京麻布台セミナーハウス

「不良な子孫の出生を防止する」ことを目的とした優生保護法。合意のない強制的な不妊手術や中絶が、やっと可視化されてきました。

一方、優生保護法には母性の生命健康の保護というもう一つの目的がありました。堕胎罪がありながら中絶が条件付きで合法化され、その適用条件が拡大された背景にどんな社会状況や議論があったのかを探ります。

少子化時代の人口政策と優生思想について、過去と現在をつなぐ勉強会、ぜひご参加ください。


  • 日時:2019年5月11日(土)11:00-13:30
  • 会場:東京麻布台セミナーハウス (大阪経済法科大学) 2階大研修室
  • 参加費:500円(学生・非正規雇用の方などは300円)
  • 申込み:準備の都合上、なるべくお申込みをお願いします。当日参加も可。

プログラム

  • 報告1.柘植あづみ:引揚者の「不法妊娠」中絶問題と優生保護法の成立前夜
  • 報告2.大橋由香子:優生的な不妊化措置と、堕胎罪―中絶許可が意味するもの
  • フロア討議

主催: 高校保健・副教材の使用中止・回収を求める会

共催: リプロダクティブ・ライツと健康法研究会

勉強会案内URL:https://remcat.hatenadiary.jp/entry/20190413/seminar3

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Preprint: Monthly Labour Survey Misconduct since at Least the 1990s (Tanaka S. 2019-03-05)

オンラインメディア『wezzy』記事 (2019-02-07)「「毎月勤労統計調査」は90年代以前から改ざんされていた? データ改ざんに甘い社会」をベースにした英語論文を公表しました。2001-2003にかけての誤差率の変動を分析したブログ記事 (2019-01-25)「捨てられていたサンプル: 毎月勤労統計調査2001-2003データの検証」の内容も付録としてつけてあります。

TANAKA Sigeto (2019-03-05) Monthly Labour Survey Misconduct since at Least the 1990s: Falsified Statistics in Japan. http://tsigeto.info/19m

This paper is based on a Japanese article published on an online media site wezzy. Its Appendix is based on a Japanese blog article by the author.

Abstract:The Monthly Labour Survey, which is one of the major economic statistics published by the Government of Japan, has been under criticism since January 2019 due to its negligent survey conduct and misinformation regarding its results. This paper approaches this scandal from a viewpoint of how the indicators of the quality of the survey were falsified and misreported. Based on published information regarding sample size and sampling errors, the author outlines three problems. (1) Since at least the 1990s, the survey’s sample size has been reported as larger than it actually was. (2) Since 2002, a significant portion of the sample has been secretly discarded. (3) Since 2004, the sampling error has been underreported by ignoring errors occurring in the strata of large establishments. These problems have escaped public attention as the government and academics are not critical of the falsification of basic information that determines the quality of the survey.

DOI:10.31235/osf.io/2bf3z(on SocArXiv)

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「毎月勤労統計調査」は90年代以前から改ざんされていた?: データ改ざんに甘い社会 (wezzy 2019-02-07)

厚生労働省「毎月勤労統計調査」をめぐる問題について、オンラインメディア『wezzy』に記事を書きました:

田中 重人 "「毎月勤労統計調査」は90年代以前から改ざんされていた? データ改ざんに甘い社会" https://wezz-y.com/archives/63479 (wezzy 2019.02.07)
・1990年代以前からの調査対象削減
・2002年以降の抽出率データ改ざん
・2004年以降の誤差率データ改ざん
・データ改ざんに甘い社会

記事で使ったデータは http://tsigeto.info/maikin/ に載せてあります。

この記事の抜粋と解説:
"データ改ざんに甘い社会で統計の信頼性を云々することの無意味さについて" (2019-02-08)  https://remcat.hatenadiary.jp/entry/20190208/wezzy

記事中の2番目の話題について、データと計算方法:
"捨てられていたサンプル: 毎月勤労統計調査2001-2003データの検証"  (2019-01-25)  https://remcat.hatenadiary.jp/entry/20190125/maikin2003
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