2020年4月 - 2023年3月
ヒト臍帯由来間葉系細胞を用いた新規子宮内膜症治療法の開発
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
子宮内膜症は霊長類にのみ自然発生し、疼痛や不妊を主訴とする女性骨盤内における慢性炎症性疾患と理解することができるため、その疾患理解を行うための動物実験としては、免疫系が正常に働きかつ自然発症するサルを使用することが望ましいと考えてきた。我々はサルの子宮内膜症の自然史について月に一度腹腔鏡検査を行うことで、その進展様式を解析し報告した。一方、子宮内膜症に対する治療戦略には未解決問題が多い。現状は、ホルモン剤か手術療法と限定的であり、前者は排卵を抑制するため治療を行うためには妊孕能を放棄せねばならず、また後者は深部子宮内膜症等の重症例では手術合併症も多くなり安全とは言い難い。そこで近年、抗炎症性作用を有する新しい医療資源として注目されているヒト臍帯由来間葉系細胞(Umbilical cord derived stromal cells; UC-MSC)を用いることで、前述の問題を解決する子宮内膜症の新規治療薬候補とすべく本自験を行うこととした。昨年までにUC-MSCの樹立を行い、また腹腔鏡検査による子宮内膜症罹患サルの選定を行ってきた。本年は子宮内膜症罹患サルとして選定した8頭に対して、5頭をUC-MSC投与群。3頭をcontrol群とし研究を行った。評価は腹腔鏡検査による腹腔内所見と子宮内膜症のマーカーであるCA125を用いた。毎週静脈投与を行い投与群で2頭にCA125の低下を認めたが、腹腔内所見にて有意な改善は認めなかった。Control群では1頭子宮内膜症に起因すると思われる腸閉塞を発症し、安楽死にいたった個体が存在した。
- ID情報
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- 課題番号 : 20K09668
- 体系的課題番号 : JP20K09668