共同研究・競争的資金等の研究課題

2018年6月 - 2021年3月

クイア仏教学の構築

日本学術振興会  科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)  挑戦的研究(萌芽)

課題番号
18K18494
配分額
(総額)
6,370,000円
(直接経費)
4,900,000円
(間接経費)
1,470,000円

研究初年度にあたる2018年度は、クイア仏教学の構築をめざして「クイア」という言葉の理解に力を注いだ。「クイア」とはかつて侮蔑的な意味でセクシュアル・マイノリティ当事者に浴びせられていた言葉を、当事者が逆手にとり、差異をのりこえて連帯することで差別状況を転換する運動という意味がある。それともう一つ、男/女や異性愛/同性愛などの二項対立で規定されてきた様々な概念を否定的に捉え、性に関する現実の問題を契機としながら、既成の概念規定を脱却し克服していく論理を再構築していく学問という意味もある。こうした「クイア」な課題の克服を目的とした実践的な学問としてクイア・スタディーズが形成されつつあるということが理解できた。
こうした「クイア」的視点を仏教研究と融合させていくにあたり、現実的なクイア的疑問を想定することにした。なぜなら、クイアに代表される差別などの具体的な問題を考える場合、「仏教は無分別を説き差別を超越した宗教だから、教えとしては解決している」という意見や「仏教とは超越概念なので、現実の問題にはかかわらない」という意見をしばしば耳にするからである。
そうした意見に対して、クイア・スタディーズからはこのような問いが返されるはずである。「教えとしては解決している問題であるにもかかわらず、なぜ具体的な教団のなかで差別現象が存在し続けているのですか?」とか「具体的に差別が解消できていないのであれば、差別の解消にむけて仏教を再構築する必要があるのではないですか?」と。現実的な課題を前提とし、その解決のための論理の再構築を模索するクイア・スタディーズだからこそだされる貴重な問いだといえる。
今年度は以上のようにクイアという言葉の定義と、クイアスタディーズという分野について知ることができた。残された2年間で、さらに課題への理解を深めていきたいと思う。

ID情報
  • 課題番号 : 18K18494

この研究課題の成果一覧

論文

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MISC

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書籍等出版物

  3
  • 宇治, 和貴
    法藏館 2021年8月 (ISBN: 9784831838445)
  • 斎藤信行, 北畠浄光, 宇治和貴, 近藤俊太郎, 岸本伸一, 井之上大輔, 伊東正悟 (担当:共著, 範囲:親鸞の信と自然法爾)
    永田文昌堂 2021年3月20日
  • 楠, 淳證, 中西, 直樹, 嵩, 満也 (担当:分担執筆, 範囲:LGBT/SOGIと仏教ークィア仏教学の構築にむけてー)
    丸善出版 2020年1月 (ISBN: 9784621304846)  査読有り

講演・口頭発表等

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