2020年4月 - 2023年3月
ミニマルセルの創成を通してみる生命誕生のための非平衡熱力学条件
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
本研究では、生命の最も基本的な性質;1)外部から原料を取り込んで増殖に必要な分子群を合成し(代謝)、2)情報分子にコードされた情報をもとに膜が成長・分裂(情報の転送に基づくベシクルの再生産)する単純なシステム(ミニマルセル)を構築することにより、生命を支える物理法則を解明することを目的とする。これまでの研究により、膜分子としてAOT、情報高分子としてPANI-ESを用いたエネルギー代謝と鋳型重合による情報の転送に基づいてベシクルが成長・分裂する系の構築に成功している。この系を、持続的に自己生産を行うミニマルへと展開するためには、膜(面積)の成長と同期したベシクルの体積成長を実現する必要がある。2021年度はこの点に重点を置いて研究を進めた。
浸透圧差を利用したベシクルの体積増加は、ベシクル内部の溶質が時間とともに希釈されるの持続的な体積増加が望めないが、外水相に膜透過性をもつ溶質を加えることにより長時間にわたって体積成長させることに成功し、この系を用いて持続的に再生産するミニマルセルの構築に成功した。また、このベシクルの成長では、外水相から外膜に取り込まれたAOT分子がflip-flopにより内膜に移動するが、この膜分子の取り込み速度とflip-flop速度のバランスによって膜変形や分裂の様子が異なり、外膜と内膜の濃度差の非対称性が大きい場合に分裂が促進されることを分子シミュレーションによって明らかにした。このように、実験と理論(シミュレーション)を並行して進めることによりミニマルセルの分子スケールからメソスケールに及ぶ特徴を明らかにすることができている。
浸透圧差を利用したベシクルの体積増加は、ベシクル内部の溶質が時間とともに希釈されるの持続的な体積増加が望めないが、外水相に膜透過性をもつ溶質を加えることにより長時間にわたって体積成長させることに成功し、この系を用いて持続的に再生産するミニマルセルの構築に成功した。また、このベシクルの成長では、外水相から外膜に取り込まれたAOT分子がflip-flopにより内膜に移動するが、この膜分子の取り込み速度とflip-flop速度のバランスによって膜変形や分裂の様子が異なり、外膜と内膜の濃度差の非対称性が大きい場合に分裂が促進されることを分子シミュレーションによって明らかにした。このように、実験と理論(シミュレーション)を並行して進めることによりミニマルセルの分子スケールからメソスケールに及ぶ特徴を明らかにすることができている。
- ID情報
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- 課題番号 : 20H00120
- 体系的課題番号 : JP20H00120
この研究課題の成果一覧
絞り込み
講演・口頭発表等
5-
第71回高分子討論会 2022年9月7日 招待有り
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第35回分子シミュレーション討論会 2021年11月29日
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第70回高分子討論会 2021年9月6日 招待有り
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第69回高分子討論会 2020年9月17日 招待有り
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第69回高分子学会年次大会 2020年5月27日