講演・口頭発表等

福島県阿武隈山地のスギ林及びコナラ林における放射性セシウム吸収量の推定

日本地球惑星科学連合2021年大会(JpGU 2021)
  • 新里 忠史
  • ,
  • 佐々木 祥人
  • ,
  • 伊藤 聡美
  • ,
  • 渡辺 貴善
  • ,
  • 雨宮 浩樹*

開催年月日
2021年5月
記述言語
日本語
会議種別
開催地
横浜(online)
国・地域
日本

東京電力ホールディングス福島第一原子力発電所事故に由来する放射性物質のうち、$^{137}$Cs(以下、Cs)は半減期が約30年と長く、今後長期にわたり分布状況をモニタリングし、その影響を注視していく必要がある。森林のCs流出率は1\%に満たず、森林は長期にCsを林内に留める機能を有すると考えられる。本研究では、林産物のCs濃度予測モデル構築で必要となる樹木のCs吸収量の推定結果を報告する。阿武隈山地の生活圏に隣接するコナラ林とスギ林において年間降雨量や樹木密度がほぼ同様の林分を選定し、2015年から2019年にかけて伐木により樹木試料を採取した。国際生物学事業計画における養分吸収量の算出方法に従い、植物体の生長に伴う吸収量及び植物体からの枯死及び溶脱により失われた量の総和を樹木のCs吸収量とした。樹木の生長に伴うCs吸収量は、バイオマスの増分に樹木各部のCs濃度を乗じて算出し、樹木からの枯死及び溶脱により失われたCs量は、リターフォール,樹幹流及び林内雨に伴うCs移動量の総和とした。樹木の生長に伴うCs吸収量はコナラ林とスギ林で年間あたりそれぞれ0.1及び0.06\%、吸収量の総和は年間あたりそれぞれ1.37及び3.13\%となった。IBPによる京都近郊の落葉広葉樹林におけるN, P, Kの吸収量(1.2-20.3\%)と比較して低いCs吸収量は、本調査地における2015年以降のスギやコナラ立木のCs吸収が限定的であり、Cs濃度の大幅な上昇が生じにくいことを示す。今後、樹木のCs吸収量と他元素の移行量の差異の要因解明が課題である。

リンク情報
URL
https://jopss.jaea.go.jp/search/servlet/search?5070987