講演・口頭発表等

2018年10月12日

パルボウイルスが蔓延したペットショップへの1介入事例

平成30年度日本小動物獣医学会(東北)
  • 木村祐哉
  • ,
  • 亀島 聡
  • ,
  • 伊藤直之

記述言語
日本語
会議種別
口頭発表(一般)
開催地
山形

1.はじめに:パルボウイルスは消毒薬への抵抗性があり、また幼若動物への病原性も強いことから、繁殖施設等で発生した際の管理が重要となる。演者らはパルボウイルスが蔓延したペットショップに対し、個体の治療だけでなく、店舗内の衛生管理を含めた多面的な介入を行うことで、感染の拡大を阻止せしめたので、対応の一例として報告する。
2.材料および方法:某ペットショップから、重度の嘔吐および下痢を繰り返すとの主訴で、13週齢のダックスフンドが紹介受診した。この施設には、同様の症状を呈した末に虚脱状態に陥っていたチワワがいるほか、それまでに既に2頭の犬が死亡していた。イムノクロマト法により糞便中のパルボウイルス陽性が確認されたため、店舗内の蔓延とみなし、発症動物の隔離治療に加えて衛生管理の指導などの介入を行った。店舗への新規個体の導入は停止させ、既に店舗にいる個体については、無症状ではあるものの感染している可能性のあったものは施設内の別室に隔離し、消化器症状を呈したものは別施設に移動して治療を施すものとした。各施設では衛生的手洗い、次亜塩素酸による消毒、使い捨てられる食器や手袋、上着の使用などを徹底した。
3.成績:介入から4日後に8週齢のポメラニアン(パルボウイルス:+、イソスポラ:+)、5日後にビーグル(パルボウイルス:‐、イソスポラ:+)が消化器症状を示したが、それ以降の新規発症はなかった。虚脱状態だったチワワは当日中に、ポメラニアンは発症9日後に死亡したが、ダックスフンドおよびビーグルは軽快したため、17日後に糞便中の病原体が陰性となったのを確認した時点で、別施設での隔離治療を終了とし、知人への譲渡を検討することとした。店舗の衛生管理は介入15日目に確認し、イソスポラの発生があったため熱湯消毒を追加する一方で、疑似症例がいないことから別室隔離の解除をするなどの調整を行い、さらに5日後にあたる介入22日目から新規個体の導入を許可した。
4.考察:本事例ではペットショップ側が協力的で、衛生管理を迅速に改善できたため、計4頭の死亡で被害を食い止められた。しかしながら、時に複雑な事情が絡み、入念な打ち合わせを行いながら態勢を整えていくことになる。感染症の蔓延に対する指導も獣医師の役割であるため、適切な介入を考える必要があるであろう。