
吉川 弘晃
基本情報
- 学位
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文学士(2016年3月 京都大学)文学修士(2018年3月 京都大学大学院)
- 連絡先
- schwarzerpanther634
ybb.ne.jp
- J-GLOBAL ID
- 201801000780001095
- researchmap会員ID
- B000292393
- 外部リンク
近現代の文化交渉史と歴史思想(日本・西欧・ロシア)を専攻しています。
私の大きな目的は、19世紀以来、日本の知識人たちが自らを変革するための根拠として領有した「西洋意識Occidentalism」が、いかに生成変化を遂げ、国境を越えて影響を及ぼしたかという視点から、〈近代/日本〉の精神史を新しく描き直すことにあります。
⑴ 博士論文:「日本知識人のロシア・ソヴィエト経験」
博士論文は、近代日本の「西洋意識」が20世紀前半に大きな変化を迎える過程を、日本知識人におけるロシア・ソ連像がもった役割に注目して明らかにするつもりです。
伝統的な「文明開花」史観では、日本は西欧諸国(英・独・仏)をモデルに「近代化」を遂げたことになっていますが、一方で国家制度(エリート層)の外に広がる精神・文化的な日本の「近代化」に決定的かつ長期的な役割をもったのはロシア文化との接触でした。
日本とロシアの知識人は、ともに急進的な「西欧型近代」(資本主義+国民国家)の周縁に置かれ、多くの問題を共有していました。博士論文では、彼らが日露戦争後から第二次大戦末期まで、どこで、いかなる国境を越える交渉を行い、それが日本の思想にどれほどの影響を与えたかを博士論文では検討します。
視点としては、従来の「ボリシェヴィキ史観」(ロシア革命を出発に、各国共産党が領導する「プロレタリア文化運動」を中心とするもの)を相対化し、十月革命以前からの日本のロシア文化受容を重視するとともに、革命と内戦がもたらした西欧(仏・独)の亡命ロシア人ネットワークの役割に注目します。
これによって1920年代のソ連文化受容を日本固有の歴史的文脈のなかで位置づけるとともに、30年代以降にも日露文化交渉が形を変えて影響を与えていた点を解明することができます(従来の視点では30年代は日「ソ」交流の「冬の時代」として軽視されてきた)。
方法論については、こうした国境を越えた文化交渉のあり方とその変化について、20世紀前半に全世界的に進んだ歴史的条件の変化(「西欧=近代文明」への懐疑と反発、「文化外交」による知識人交流の制度化・動員)を踏まえて議論すべく、西欧各国のロシア・ソ連像を比較したり、地域を越えて点在する多国語で書かれた文書を積極的に用います。
⑵ PD研究課題:「20世紀前半の日本の歴史思想とその〈外部〉」
以上と同時並行で、インターナショナルな相互交渉が求められるなか、人文学に相応しい歴史叙述や歴史観のあり方そのものを探るべく、史学史や歴史哲学、歴史理論の研究(具体的には言語論的転回やグローバル・ヒストリーに対する自らの方法論的立場を批判的に構築すること)を進めています。
さしあたり、博士課程後は20世紀前半の日本知識人たちの歴史思想を欧州・ロシア・中国といった〈外部〉との接触や共振のなかで位置づけ直すつもりです。世紀転換期に欧州の人文・社会研究を襲った「実証主義」への懐疑(S・ヒューズ)、日本にも上陸し、戦間期には「西洋中心主義」や「直線的進歩史観」が限界を迎えるなか、「時代区分」や「世界史」といった概念をめぐり、イデオロギーや学問領域を越えた議論が生まれました。従来の思想史では扱われなかった歴史家を含め、彼らの議論を検証し、新たな枠組から再構成していくことを目指します。
⑶ 共同研究課題:「国際反共運動における亡命ロシア・東欧知識人:西欧・北米・東アジア」
「短い20世紀」に点火したのが共産主義であったとすれば、それを駆動させ続けたのは反共産主義であったと言えるでしょう。しかしながら、前者に比べて後者の思想・運動を世界史的観点から総括する試みはおろか、基礎研究さえも十分に進んでいません。
国際的な反共運動を担ったのは旧ロシア帝国領からの亡命知識人でした。彼らは革命後から西欧諸国や北米で活動しましたが、そのなかには日本帝国や満洲国、中国で活動する者もいましたし、彼らのもつソ連情報は戦前から日本知識人にも影響を与えていました。
本計画は、共同研究者の協力を得ながら、1930〜50年代の彼らの西欧・北米・東アジアでの活動の実態を、各国語の資料(さしあたりは日本国内のもの)をもと、これまで見過ごされてきた地域を越えた運動・思想のネットワークを見出すことを目指します。
⑷ アウトリーチ・研究委託
学校法人(カルチャースクール)での授業や文化・学術団体での一般向け講演会、研究業務委託を引き受けることで、自らの学問と知識の幅を拡げるとともに、学界で生産された知識を専門分野を越えて伝導させる方法を研鑽しています。
まず、日本近代の学知にとって最も重要な「アウトリーチ」とは「翻訳」です。少しずつではありますが、各国語(英・独・仏・露)で出版された日本学の研究を紹介したり、重要かつ有用な歴史的資料を日本語で読めるようにしているところです。
次に、22年春以降、インターネット論壇「ことのは」での対談番組を通じて、スラヴ・ユーラシア研究の専門家をお呼びして、ますます緊迫化するウクライナ情勢に対して人文・社会科学の立場から中長期的な把握を手助け(司会・インタビュアー)しています。
https://www.kotonoha-rondan.com/
さらに、輸入学問から輸出学問への転換、つまり近現代までの日本の経験を世界全体の問題解決へ向けて発信していく必要性が高まるいま、日本語圏における日本学(研究)の構築が求められています。しかし、「信頼できる教科書がほぼない」「教育課程が定まっていない」「研究体制(領域間の協同)が未成熟である」といったように、解決すべき課題は山のようにあります。勤務先(明星大)での授業作りを通じて「国際的」かつ「学際的」に学生と教員がともに新しい領域の当事者として向き合えるあり方を模索しています。
⑸ ブログ・SNS・ラジオ放送(ただいま停滞中、御免!)
日々の研究生活や成果報告についてはブログやSNSを通じて発信しておりますので、ご覧いただけると幸いです。
https://h-yoshikawa.hatenablog.com/
https://twitter.com/IN_Japanologie
なお、2022年2月より、ラジオ番組「〈史想〉の雑音録」の配信を開始しました。1週間に3〜4本分(できれば毎日1本)のペースでの投稿を目指しています。これからはブログやSNSよりはラジオでの発信に力を入れていくつもりです。よろしくお願いいたします。
https://radiotalk.jp/program/100688
※本ページでダウンロードできない論文やその他記事の入手、さらに質問・コメントに関しては、吉川のメールアドレスにお問い合わせください。
主要な経歴
11学歴
6-
2019年4月 - 現在
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2018年3月 - 2019年3月
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2016年4月 - 2018年3月
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2011年4月 - 2016年3月
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2007年4月 - 2010年3月
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2009年3月 - 2009年5月
委員歴
5-
2023年4月 - 現在
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2016年12月 - 現在
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2018年3月 - 2023年5月
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2017年4月 - 2019年3月
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2016年4月 - 2017年3月
受賞
2論文
5-
社会科学 53(2) 1-30 2023年8月 査読有り筆頭著者
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Antitled 2 63-87 2023年3月 査読有り筆頭著者
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武蔵学園史年報 24 105-142 2022年3月 招待有り
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『日本エーゲ海学会誌』 30 印刷中 2020年7月 査読有り
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『人文学の正午』 9 1-28 2019年3月 査読有り
主要なMISC
15-
人文×社会 5 323-335 2022年3月
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Japan Review 36 2022年3月 招待有り筆頭著者
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史鏡 3 22-28 2021年9月 筆頭著者
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『想文』 1 96-103 2018年6月 査読有り
書籍等出版物
1-
学校法人根津育英会武蔵学園 2023年3月
主要な講演・口頭発表等
34-
世界政治研究会 2023年10月20日 招待有り
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20世紀メディア研究所第150回研究会 2021年10月30日 20世紀メディア研究所(早稲田大学) 招待有り
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大阪歴史科学協議会帝国主義部会(8月部会) 2021年8月6日 招待有り
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東アジア日本研究者協議会第4回国際学術大会 2019年11月2日 國立臺灣大學文學院
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歴史論研究会関東部会第2回例会 2019年7月28日 文京総合体育館湯島地域活動センター
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世界で日本史を考える - 日仏歴史学シンポジウム 2019年4月19日 日仏会館 招待有り
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Graduate Conference in Japanese Studies 2018 2018年12月3日 大阪大学中之島センター
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Historikerwerkstatt in Osaka(第41回ドイツ現代史学会大会・若手企画) 2018年9月22日 大阪市立大学
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西洋近現代史研究会例会 2018年6月9日 駒澤大学駒沢キャンパス
主要な担当経験のある科目(授業)
9主要な所属学協会
10共同研究・競争的資金等の研究課題
5-
同志社大学人文科学研究所 2022年4月 - 2025年3月
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日本学術振興会 若手研究者海外挑戦プログラム 2022年12月 - 2023年3月
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神戸大学国際文化学研究推進センター 2022年度国際文化学研究推進インスティテュート研究プロジェクト 2022年4月 - 2023年3月
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日本学術振興会 特別研究員奨励費 2019年4月 - 2022年9月
-
武蔵高等学校中学校 野外研究奨励基金 2007年8月 - 2007年9月
メディア報道
9-
Foresight 新潮社 2022年6月21日 インターネットメディア
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Foresight 新潮社 2022年5月17日 インターネットメディア
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『総研大NEWSLETTER』第123号 2019年8月 会誌・広報誌
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『津軽新報』 第3面 2019年7月28日 新聞・雑誌
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『陸奥新報』 第19面 2019年7月20日 新聞・雑誌
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『奈良新聞』 朝刊第9面 2018年3月22日 新聞・雑誌
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『キリスト新聞』(オンライン版) 2017年12月18日
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GreeceJapan.com 2017年11月22日 インターネットメディア
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『京都新聞』 朝刊第13面文化欄 2017年11月17日 新聞・雑誌
その他
8-
2021年2月菅原潤『上山春平と新京都学派の哲学』合評会:哲学・文学・歴史からの共読mit-lesenを通じて 第2弾 キャンパスプラザ京都にて2021年2月13日に開催(歴史論研究会の主催)。
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2019年11月 - 2019年11月2019年11月初に国立台湾大学にて開催された東アジア日本研究者協議会第4回国際学術大会の「次世代論文発表」への参加(題目:「国交正常化(1925)前後における日ソ文化交渉の進展:「日露芸術協会」と「新ロシヤ展」の開催を中心に」)に対して。
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2019年9月 - 2019年9月ロシア連邦文部科学省・同交流庁(Министерство образования и науки Российской Федерации, Россотрудничество)が主催する短期語学研修(2019年8月28日〜9月25日)への参加に対して。
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2017年8月 - 2018年3月京都大学人文科学研究所のリサーチ・アシスタントとして「桑原武夫所蔵資料」の整理に協力しました。その成果の一部は次の論稿に反映されました(敬称略)。 根津朝彦「資料紹介 桑原武夫所蔵書簡―1920年代の青年期を中心に―」『人文学報』(京都大学人文科学研究所)第112号(2018年6月)、111-138頁。
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2017年9月 - 2017年9月2017年9月24日に東京大学で行われた歴史家ワークショップの「国際学会へ行こう (Making the most out of conferences)」への参加及びその後のコメントに対して助成。
社会貢献活動
9