基本情報

所属
東邦大学 医学部 准教授
学位
博士(医学)(東京大学)

J-GLOBAL ID
201901019672436190
researchmap会員ID
B000373363

現在の研究テーマ

細胞質で生じるアセチル化を介した制御機構の解明

T細胞は細菌などの病原体を体内から排除する過程をコーディネートする。T細胞は病原体を認識すると、細胞増殖能や他の細胞を補助する機能を獲得する(これをここでは、T細胞がエフェクター細胞へ成熟する、と表す)。エフェクター細胞へ成熟するには、T細胞受容体(TCR)やサイトカイン受容体からの刺激が必要である。刺激の伝達は,例えば、サイトカイン受容体であればJak/Stat経路、TCRであればLck/ZAP70から始まるRas/MAPK経路やAkt経路が関与する。これらの経路はリン酸化で調節されている。私たちはT細胞の情報伝達系を精査している過程で、サイトカイン受容体の刺激を伝達するJakとStatのそれぞれがリン酸化だけで無くアセチル化されている事を見出した。タンパク質のアセチル化といえば、核内でのヒストン修飾を思い浮かべる。JakとStatがアセチル化されることの詳しいことは全く知られていない。さらに、Jakが細胞のどこでアセチル化されているかという疑問も浮かぶ。そこで私達は、1)情報伝達分子をアセチル化する機構の解析、2)アセチル化による細胞機能の解析、のそれぞれについて検討を進めた。

現在までのところ、インターロイキン2受容体の情報伝達では、JakとStatは細胞質でアセチル化されていること、アセチル化酵素はCBPであること、のそれぞれを明らかにした(Kuwabara et al. J. Immunol., 2016)。このアセチル化によりIL-2受容体刺激は負に調節されていることも判ってきた。他のサイトカイン受容体やTCR下流の情報伝達においてもアセチル化修飾が認められた(Kasai et al., Int. J. Mol. Sci., 2018, Matsui et al., Immunol. Lett., 2018)。また、T細胞以外の細胞でも細胞質でのアセチル化が細胞機能や運命を左右することが判ってきた。このことから、特定の受容体や細胞だけで認められるのではなく、普遍的な現象である可能性がある。

アセチル化酵素CBPをわざわざ核から輸送して細胞質内の基質をアセチル化していることから、一連の現象には未知の生物学的意義があると考えられる。遺伝子改変マウスや培養細胞を用いて、1)アセチル化される基質の探索、2)アセチル化による機能変化、3)それらの結果としての細胞運命調節について解析をしている。生化学的手法や分子生物学的手法だけでなく、顕微鏡観察により、細胞質でのアセチル化がもたらす生理的調節機構と意義を明らかにしていきたい。明らかになった現象の中から疾患治療標的を探索したい。

 

(進展後追加する) 


経歴

  2

学歴

  1

論文

  22

MISC

  1

共同研究・競争的資金等の研究課題

  9

社会貢献活動

  8