共同研究・競争的資金等の研究課題

2004年 - 2005年

近代日本黎明期における薩摩藩集成館事業の諸技術とその位置付けに関する総合的研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特定領域研究  特定領域研究
  • 長谷川 雅康
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  • 門 久義
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  • 田辺 征一
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  • 渡辺 芳郎
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  • 上野 正実
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  • 池森 寛

課題番号
16018216
担当区分
研究分担者
配分額
(総額)
3,900,000円
(直接経費)
3,900,000円
資金種別
競争的資金

前期に研究した薩摩藩集成館事業の5技術分野に加え、熔鉱炉・磯窯(薩摩焼)・製糖技術などの分野を研究してきた。判明した主な結果の概要を記す。
(1)建築:同事業に関わる遺構の旧鹿児島港港湾施設と集成館製造の南洲神社電燈について実測調査と文献調査を行った。前者は、江戸末期から明治、昭和の遺構が連続して現存し、石積技法が優れ、後者は、高い鋳造技術を示し、集成館が地域の近代化に資した好例である。
(2)紡織技術:鍋島報效会所蔵『薩州見取絵図』に描かれている大幅機の絵図を詳細に検討し、それを復元するための製作図の作成をした。併行して当時この織機で織った帆布(尚古集成館所蔵)の組織分析も合わせ行い、織機の構造を解析した。
(3)熔鉱炉:3回目の発掘調査を行い、これまでの結果とも考え合わせ、斉彬時代に建設された日本最初の熔鉱炉が『薩州見取絵図』に描かれた位置にあった可能性が高いこと。それを裏付ける石垣、水路跡、側溝跡などが絵図にある位置に対応して発見された。
(4)磯窯:『薩州鹿児島見取絵図』に描かれた連房式登窯(磯窯)を検討した。燃焼室+10〜11室の窯では当時最大規模。輸出用陶磁器と反射炉用耐火煉瓦の生産用で産業志向が強い。反射炉用煉瓦は天草陶石と鹿児島在地の工人の磁器製造技術の導入で成功した。
(5)製糖技術:奄美大島の在来黒糖製造技術について文献と現存する圧搾機の実測調査を行い、実態を明らかにした。一方、慶応年間に薩摩藩が同島内4カ所に建設した白糖製造工場の実態を現地調査した。立地条件・建築関連遺物(耐火煉瓦)について検討した。立地は山を背に、海に面し、近くに川を擁する共通点がある。
総じて、斉彬が集成館事業により軍事技術と民需技術の両面の近代化を他に先駆けて展開した具体像をかなり明らかにできた。

ID情報
  • 課題番号 : 16018216