2020年4月 - 2023年3月
ALSに関連する脳内ネットワークの同定と診断・モニタリング支援システムの構築
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
筋萎縮性側索硬化症 (ALS)診断の補助となりうる客観的バイオマーカーが見出されれば、発症早期における類似症状を呈する他疾患との鑑別に有用である。末梢で中枢神経障害を評価できるneurofilament light chain (NfL)と自然免疫に関連するchitinase 3-like 1 (CHI3L1)の血清濃度測定を用いて、臨床現場でよく問題となる初期のALSとその類似症状を呈する他疾患との鑑別を試みた。血清NfL濃度では、area under the receiver operating curve (AUC) は0.90と高い値であり、発症初期のALSにおいても診断能力が優れていることが明らかになった。一方でCHI3L1のAUCは0.55程度であり、発症早期のALSの鑑別には適していないと考えられた。血清NfL濃度は中枢神経障害を反映することが知られているが、ALSの特定の脳部位障害との関連は明らかになっておらず、部位別の機能・構造的MRIとの相関解析で上記が明らかになれば、簡易な採血検査で中枢神経のいずれの部位が障害されているかが推測可能となる。また、安静時機能的MRIに対して独立主成分分析を行い、default mode network (DMN)とsensorimotor network (SMN)を同定し、voxelwise analysisを用いてそれぞれのネットワーク内でのALSにおける変化を調べた。DMNではALSの後部帯状回 (Brodmann area, BA 30)の活動性が低下し、SMNでは中心後回 (BA 1, 5)、上頭頂小葉 (BA 7)と補足運動野 (BA 6)近傍での活動性が上昇していた。ALSで変化していたネットワークと構造的MRIで得られる各脳部位の容量との関連を調べ、診断支援システムに取り込める方法・部位を絞っていきたい。
- ID情報
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- 課題番号 : 20K12670
- 体系的課題番号 : JP20K12670