共同研究・競争的資金等の研究課題

2001年 - 2002年

大脳皮質視覚野における可塑性の感受性期終了機構

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(B)  基盤研究(B)

課題番号
13480265
体系的課題番号
JP13480265
配分額
(総額)
14,600,000円
(直接経費)
14,600,000円

1、発達期のラット視覚野スライス標本において、4層に2Hz、15分間の条件刺激を与えると、2・3層錐体細胞の興奮性シナプスに長期増強が起る。この誘発は50μMのNi^<2+>により阻害されるので、T型Ca^<2+>チャネル依存性と思われる。この長期増強は視覚反応可塑性の感受性期に限局して起るが、暗室飼育すると感受性期が延長するのに対応して成熟動物でも発生する。しかし、その後の短期間(2日間)の視覚体験により感受性期が終了するのに対応して長期増強も起らなくなる。当初、錐体細胞のT型Ca^<2+>チャネル電流を測定したが、その電流はNi^<2+>感受性がなかった。しかし、それは細胞外液にK^+チャネル阻害薬を加えることが原因であることが判明した。その阻害薬なしでは、記録されるT型Ca^<2+>チャネル電流値は小さいが、50μMのNi^<2+>により抑制された。この条件下で測定すると、Ni^<2+>感受性Ca^<2+>チャネル電流は成熟と共に減少するが、暗室飼育するとその減少は起らなかった。しかし、その後の短期間の視覚体験により急速に減少した。この結果は、長期増強発生の変化は、Ni^<2+>感受性のT型Ca^<2+>チャネル数が変化するためであることを示唆する。
2、暗室飼育後の短期間の視覚体験で長期増強の発生が抑制される機構を調べた。暗室飼育後オスモティクミニポンプを用いてRNA合成阻害薬アクチノマイシンDを一側の視覚野に持続的に注入しながら2日間視覚体験させてからスライス標本を作成した。アクチノマイシンDを加えなかった側のスライスでは長期増強が起らなかったが、アクチノマイシンDを加えた側のスライスでは長期増強が起った。この結果は、視覚入力により遺伝子発現が起ることが長期増強発生を抑制するのに必要であることを示しており、感受性期を終了させるには視覚入力により視覚野細胞に遺伝子発現が起き、長期増強発生を阻害する分子が形成されるか、その発生に必要な分子の合成が抑えられるためと考えられる。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-13480265
ID情報
  • 課題番号 : 13480265
  • 体系的課題番号 : JP13480265