共同研究・競争的資金等の研究課題

2015年4月 - 2017年3月

明清期の景徳鎮官窯における管理・運営体制に関する研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
15J11377
体系的課題番号
JP15J11377
配分額
(総額)
1,700,000円
(直接経費)
1,700,000円

明清両政府は、景徳鎮に官窯を築き、宮廷や官府で使用する磁器を製作させた。採用者は、文献史料と実物資料を検証することで、景徳鎮官窯の管理・運営体制の解明に取り組んだ。今年度は、主に以下の3点を明らかにした。
1、清代官窯で運用されていた規則『焼造瓷器則例章程』には、磁器の原価計算基準や、製作工程が詳しく書かれている。しかし、現在までに完全な形で出版されたことはなく、研究にも利用されていなかった。そこで採用者は、章程が成立した背景を明らかにした上で、全文の訳注・解説を行い、章程の史料的意義を明示した。
2、1907年、景徳鎮では江西瓷業公司という民営企業が創設され、官窯を統合したが、その具体的な背景と要因は明らかにされていなかった。そこで史料の総合的な検証を通じて、清末の窯業にいかなる問題が内在し、民営企業がどのように官窯を統合したのか検討した。その結果、官窯では西太后の影響下で大量の磁器が注文されたため、生産が滞るケースも確認できた。また民窯では、磁器の質の悪化などにより、景徳鎮磁器の市場競争力が低下していた。これらの状況に対して、公司が成立したことで、企業として磁器を生産するようになり、磁器を円滑に生産できるようなっただけでなく、景徳鎮磁器の市場競争力獲得にも繋がった。
3、明代官窯に出された注文記録を検証することで、官窯に関わる機関と、その役割について整理した。その結果、明初の段階では主に工部が官窯を管理していたが、徐々に工部と内府(宦官の機関)がそれぞれ磁器生産に関わるようになり、注文内容にも差異が現れた。工部は実用性を重視し、注文数が多くなかったが、内府は高い奢侈性を要求し、注文数が膨大であった。また、工部と内府が互い違いに発注し、内府の注文を工部が撤回するケースも確認できた。明代の官窯体制は、官僚と宦官が併存・対立する明朝政治機構の特徴を、如実に反映していたのである。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-15J11377
ID情報
  • 課題番号 : 15J11377
  • 体系的課題番号 : JP15J11377