2021年4月 - 2022年3月
実用主義的なアプローチに基づく高等学校歴史教育に関する実践的研究ー「歴史のif」を考える歴史授業モデルの開発を通してー
全国社会科教育学会 2021年度全国社会科教育学会研究推進プロジェクト
- 配分額
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- (総額)
- 50,000円
- 資金種別
- 競争的資金
中村洋樹(2013)原田智仁(2015)田尻信壹(2017)らは、「Reading like a Historian」の分析を通して、歴史的思考技能を明らかにし、その技能の獲得を目指す歴史授業を推奨してきた。この動向は、共通テストや大学入試にも影響を与え、現在、一次史料を読解させる問題の導入が進められている。さらには、このような大学入試の変化を受けて高等学校の教育現場においても一次資料の読解を通して歴史的思考技能の習得を目指す歴史授業実践が行われるようになった。一方で、応募者らが2019年度に本プロジェクトの助成を受け実施した調査では、歴史的思考技能の習得を「歴史を学ぶ目的」と考える生徒は少数だということが明らかになった。つまり、歴史的思考技能の習得を目指す歴史授業は、生徒が考える「歴史を学ぶ目的」と相反しており学ぶ意義を見出しづらい学習になる可能性が高いのではないか。なお、同調査において、多くの生徒は「歴史を学ぶ目的」を「歴史を通して日常生活や未来社会に役立つ実用的な知識の獲得」と考えていることがわかってきた。ここから、応募者らは、生徒に歴史を学ぶ意義を実感させる授業を実践するためには、生徒が「歴史を学ぶ目的」と考える実用主義的なアプローチに基づいた歴史授業の開発研究を進めることが重要であると考えるようになった。渡部竜也(2019)は、実用主義の歴史教育論として、「来歴を知る」「教訓を得る」「人に歴史を伝える」「「たら・れば」を考える」「歴史を乗り越える」の5つのアプローチを提案する。本研究では「「たら・れば」を考える」アプローチに基づく高等学校の歴史授業モデルの開発を目的とする。その際に、社会学者の赤上裕幸(2018)らが近年進めている「歴史のif」の学術可能性に関する研究成果を援用し授業構成論を導くこととする。