共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年4月 - 2023年3月

生息環境および繁殖形態がフタトゲチマダニの集団構造に与える影響の解明

日本学術振興会  科学研究費助成事業 若手研究  若手研究

課題番号
20K15674
体系的課題番号
JP20K15674
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
4,290,000円
(直接経費)
3,300,000円
(間接経費)
990,000円

本研究では、生息環境や繁殖形態がフタトゲチマダニHaemaphysalis longicornis(フタトゲ)の集団構造に与える影響を明らかにし、分布拡大プロセス推定における集団構造のスタンダードモデルを提唱することを目的としている。本年度は、フタトゲのミトコンドリアゲノム(ミトゲノム)レベルおよびSNPレベルの分子系統学的および集団遺伝学的手法を用いて、さらなる解析を行なった。まず大きな集団構造を明らかにするために日本各地とオセアニア諸国で野外採集されたフタトゲおよび所属研究室で継代維持されている両性生殖系統および単為生殖系統の実験室個体を用いて解析した。その結果、ミトゲノムでは2つの大きなクレードに分かれたが、クレード間における地理的隔離による分断および繁殖形態による系統分岐は認められなかった。SNPレベルでは、海洋による地理的隔離によって分断されたフタトゲ集団が示されたが、繁殖形態による遺伝的な特徴は認められなかった。これらのことから、ミトゲノムレベルではフタトゲの大きな集団構造を示すことが困難であると考えられる。またSNPにおいても、日本国内におけるフタトゲ集団の地理的な特徴を示すことはできなかったものの、日本産とオーストラリアを除くオセアニア産のフタトゲ集団を識別できる可能性が示された。これは、日本国内では家畜による移動によりフタトゲ集団の地理的な構造が均一化してしまっていると考えられ、さらにオセアニアには過去にアジアの原産国から導入され分断されたままのフタトゲ集団が分布していると考えられる。
また今後は小さな集団構造を明らかにするために、地理的に近い地点から採集されたフタトゲを用いて、SNPを用いた集団遺伝学的な解析の有効性を検証する。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20K15674
ID情報
  • 課題番号 : 20K15674
  • 体系的課題番号 : JP20K15674