症例は40歳代男性で、4年前に撮影したパノラマX線写真上で右下顎骨体部の異常像を指摘された。時折、下顎右側臼歯部に咬合痛を覚えたが、特に加療なく、症状が消失していたため、経過観察となった。今回撮影したパノラマX線写真との比較で、病変が拡大傾向にあった。初回画像検査(パノラマX線撮影、デンタルX線撮影、咬合法X線撮影)を実施した。パノラマX線写真では、右下顎骨体部に類円形のX線透過像を認めた。境界は明瞭で、辺縁形態は整っており、病変の頭側では比較的明瞭な骨硬化縁を有した。下縁部の皮質骨は菲薄化を認めた。オトガイ孔は病変と重複して描出されたが、下顎管自体の描出は不良で、指摘困難であった。デンタルX線写真では、パノラマX線写真所見とは異なり、病変頭側の硬化縁は弱く、境界はやや不明瞭であった。咬合法X線写真では、病変相当部に頬舌的膨隆は認めなかった。右下顎骨単純性骨嚢胞と診断した。頬側から骨を開創したところ、脆弱な被膜様組織を認めた。内部は血性、やや粘稠な内容液で満たされており、出血はみられなかった。積極的な処置は行わず、閉創した。