症例は60歳代男性で、約3ヵ月前に右側舌下部腺様嚢胞癌に対し、手術を施行した。術後、創部の自発痛と右下唇粘膜から前歯部唇側歯肉にかけてのピリピリ感が持続した。右側下顎部インプラント体の周囲炎、歯周炎にて歯科でも処置を継続したが、舌側の創部とは逆の唇側歯槽部に膨隆を認めた。電気歯髄診では下顎右側犬歯から左側側切歯までの5歯の反応が鈍く、失活が疑われた。初回画像検査(パノラマX線撮影、デンタルX線撮影、歯科用コーンビームCT検査)を実施した。パノラマX線写真では、前歯部にび漫性のX線透過像が広がっており、皮質骨下縁の菲薄化、一部消失を認めた。デンタルX線写真では、右側側切歯犬歯間のX線透過性が高く、根尖下方へと境界不明瞭なX線透過領域が広がり、歯槽頂部の骨は保たれていた。歯科用コーンビームCT画像では、前歯部における骨吸収は上方では唇側優位に進行し、残存した一部の皮質骨が外方へ偏位していた。下方では舌側優位の骨吸収で、皮質骨の菲薄化、断裂が描出された。骨吸収は下方舌側から骨髄内を経由して上方唇側へと連続した。舌下腺腫瘍再発、下顎骨浸潤と診断した。