2018年4月 - 2022年3月
冷凍生鮮野菜の実現に向けた細胞膜の水透過性と電気物性評価による組織軟化挙動の解明
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究 若手研究
本課題では、野菜組織中の細胞膜について電気的な解析手法による構造評価と水透過性評価を行い、凍結過程での氷結晶生成等の現象と細胞膜機能の変化との関係を解明し、凍結時の組織軟化に与える影響を明らかにすることを目的とする。本年度は、異なる凍結速度で凍結したアスパラガスおよびニンジン組織の細胞膜の構造的・機能的変化を電気インピーダンス解析の手法により調査した。測定した電気インピーダンスの周波数特性について細胞の電気的等価回路モデルを用いた解析手法を適用し、モデルを構成するパラメータである細胞膜容量、細胞外液抵抗および細胞内液抵抗の値を算出した。細胞膜容量は細胞膜の構造的な健全性を反映するパラメータであり、この値は凍結・解凍操作によって低下する傾向が見られた。また、凍結・解凍過程における細胞外液抵抗の低下および細胞内液抵抗の増加が見られ、電解質濃度の異なる細胞内外液を隔てている細胞膜の機能的変化に伴う、膜のイオンおよび水の透過性の変化が生じていると推察された。各パラメータの変化量に凍結速度による差異は見られず、凍結時における細胞膜の構造的・機能的変化は凍結速度に関わらず生じるものと考えられた。また、X線CTを用いた間接観察法により組織内に生じる氷結晶の形状を評価したところ、凍結速度が高くなるほど氷結晶は微細化・均質化する傾向が見られた。一方で、いずれの速度で凍結した試料でも凍結・解凍後の力学物性は凍結前の試料と比べ大きく変化し、特に弾性的な性質が大幅に低下しており、凍結速度による差異はわずかであった。これらの結果より、冷凍加工による野菜組織の力学物性変化の変化は、細胞膜の機能的・構造的損傷による膨圧の低下が大きな要因である可能性が示され、氷結晶の形状による影響は限定的であることが示された。
- ID情報
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- 課題番号 : 18K14554
- 体系的課題番号 : JP18K14554