2018年4月 - 2022年3月
シナプス形態・回路動態の異常を示す記憶障害の分子基盤
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
1)昨年度に記憶痕跡細胞の同定法が確立したため、今年度は野生型マウスとTSCマウスの記憶痕跡細胞に何らかの相違があるかどうかを検討した。すなわち、両マウスの海馬に神経活動依存的にEGFPを発現するAAVを注入し、実験装置内でフットショックを与え、翌日同じ装置にマウスを入れた。フットショック時に活動したニューロンをEGFP、想起時に活動したニューロンをc-Fosで標識し、両方で活動したニューロンを記憶痕跡細胞と定義した。野生型マウスでは、痕跡細胞(c-Fos発現細胞/EGFP発現細胞)の割合がバックグラウンド(c-Fos発現細胞/EGFP非発現細胞)より有意に高かったが、TSCマウスでは両者に有意差が見られなかった。この結果から、TSCマウスでは痕跡細胞率が増加しないため、記憶障害を示すと考えられた。そこで、両マウスにRheb阻害薬を投与し、同様の実験を行ったところ、TSCマウスの記憶が改善するとともに、痕跡細胞割合も有意に増加した。
2)さらに、野生型マウスの痕跡細胞と非痕跡細胞を比較し、痕跡細胞特異的にスパイン形態変化が生じるかどうかを検討した。野生型マウスの痕跡細胞(c-Fos発現細胞/EGFP発現細胞)のスパイン幅は、非痕跡細胞(c-Fos非発現細胞/EGFP発現細胞)のそれより大きいが、Tsc2+/-マウスの痕跡細胞と非痕跡細胞のスパイン幅に有意差は見られなかった。そこで、TSCマウスにRheb阻害薬を投与したところ、痕跡細胞のスパイン幅も拡大することがわかった。以上の結果から、TSCマウスでは痕跡細胞の割合が野生型に比べて少なく、スパイン幅も非痕跡細胞と変わらないが、Rheb阻害薬投与により、痕跡細胞が増加し、スパイン幅も拡大することにより、記憶が改善すると考えられた。
2)さらに、野生型マウスの痕跡細胞と非痕跡細胞を比較し、痕跡細胞特異的にスパイン形態変化が生じるかどうかを検討した。野生型マウスの痕跡細胞(c-Fos発現細胞/EGFP発現細胞)のスパイン幅は、非痕跡細胞(c-Fos非発現細胞/EGFP発現細胞)のそれより大きいが、Tsc2+/-マウスの痕跡細胞と非痕跡細胞のスパイン幅に有意差は見られなかった。そこで、TSCマウスにRheb阻害薬を投与したところ、痕跡細胞のスパイン幅も拡大することがわかった。以上の結果から、TSCマウスでは痕跡細胞の割合が野生型に比べて少なく、スパイン幅も非痕跡細胞と変わらないが、Rheb阻害薬投与により、痕跡細胞が増加し、スパイン幅も拡大することにより、記憶が改善すると考えられた。
- ID情報
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- 課題番号 : 18H02536
- 体系的課題番号 : JP18H02536