症例は66歳男性で、20年以上前に開口障害、顎関節部の咬合時の疼痛を自覚し、その後両側顎関節強直症の診断を受けていた。今回、口が開かないことを主訴に来院し、全身麻酔下に両側顎関節授動術を施行した。浅側頭動静脈は温存し、側頭筋膜浅層にて中側頭静脈を結紮、切断し、関節包を明示した。その後、下顎頭、関節結節に達し、下顎頭関節突起、側頭骨頬骨突起を明示した。両側下顎頭は肥大し下顎窩との完全な骨性癒着が認められた。側頭骨癒着部より下顎頭頸部まで超音波切削器具やレシプロケーティングソー、骨ノミを使用し、低位で骨癒着部の骨を約15mmの幅で切除した。術後5日目より徒手的な開口訓練を開始し、術後7日目より開口量が20mmを超え、両側上下顎の齲蝕歯の抜去を開始した。術後2ヵ月経過時点で、開口量は35mmまで改善し義歯作製を開始した。術後3ヵ月経過時点で、開口量は上下顎中切歯部顎堤間で40mmまで増大し、術後6ヵ月経過時点でのCT所見においても再癒着は認めなかった。術後3年経過時での開口量は維持されており義歯の着脱も可能となり経過良好であった。