顎裂部への新鮮自家腸骨海綿骨細片移植(以下骨移植)において、よりよい成果を得るため移植骨部の経時的変化についてX線CT画像分析を行い、最適な骨移植について検討した。2011年10月から2015年3月までに東北大学病院口腔外科および歯科顎口腔外科において通法に従い骨移植し、当院電子カルテ上分析可能な資料のそろっている9症例10顎裂(手術時平均年齢:11.9歳。UCLA:2例、BCLA:1例、UCLP:6例。平均顎裂幅径:歯槽頂側7.6mm、鼻腔側16.0mm。平均移植骨量:4.8g)の術前、術後1ヵ月および6ヵ月時に撮影したX線CT画像を用いて後ろ向き調査を行った。術前の固有顎裂面積平均:94.0mm2に対する術後1ヵ月時の移植骨部面積は平均:138.4mm2で、骨移植率が平均154.4%であった。また術後6ヵ月時に形成された骨架橋面積は平均:100.2mm2であり、術前の固有顎裂面積に対して充分量の平均109.9%の骨架橋形成がみられた。一方、術後6ヵ月時の骨架橋面積は術後1ヵ月時の骨移植部面積に対し平均:72.0%に減少していた。以上より、顎裂骨移植時に固有顎裂の大きさに対して約1.5倍量の骨を移植した場合、術後6ヵ月で形成される骨架橋は骨移植時の約7割に減少してほぼ顎裂部を充足させていることから、骨移植時には固有顎裂部に対して吸収量を留意した過分量の骨を移植すべきことが示唆された。(著者抄録)