共同研究・競争的資金等の研究課題

2003年 - 2004年

戦後沖縄における社会運動と投票行動の関係性に関する政治地理学的研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)
  • 山崎 孝史

課題番号
15520505
体系的課題番号
JP15520505
配分額
(総額)
2,200,000円
(直接経費)
2,200,000円

本研究は『沖縄タイムス』をもとに、1949年から2000年までに沖縄県内で発生した政治集会やデモといった集合行為(抗議行動イベント)約1400件を抽出し、各イベントをコード化したデータベースを作成した。このデータベースを定量的に分析し、政治集会等での宣言決議文の内容と定性的に照合することによって、こうした集合行為が発生する歴史的文脈のみならず、地理的文脈を析出することを試みた。さらに、こうして把握される社会運動の展開が、沖縄県民にとってはもう一つの政治的チャンネルである投票行動(特に革新票)の空間的パターンとどのような関係を有するかについて、社会経済的指標を併用した定量的分析を用いて検討した。
その結果、社会運動は沖縄をめぐる地政的・地経的文脈によって、沖縄復帰前には領土・主権・憲法適用をめぐる大衆運動として、復帰後には反戦平和や反基地を訴える革新的運動として展開し、復帰直前に琉球政府行政主席が公選されるようになったことを契機として、米軍駐留への抗議行動が革新系政党や候補への投票行動としても現われてくることが確認された。また、沖縄における米軍駐留を維持しようとする日本および米国政府を支持する勢力として保守系政党が形成されると、基地経済や国庫補助金に基づく公共事業投資に依存する地域において保守票が伸張したことが確認された。こうした沖縄社会内部における保守陣営と革新陣営との政治地理的コンフリクトが結果として米軍基地と日米安保体制の存続を支えてきたと判断できた。もっとも、社会運動の分裂と局地化、さらには沖縄政治の全般的保守化という最近の傾向から判断すると、日本国政に対する沖縄の地域的抵抗はむしろ国家への統合の力に劣位に置かれていくであろうことが予想される。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-15520505
ID情報
  • 課題番号 : 15520505
  • 体系的課題番号 : JP15520505