2018年3月31日
「子ども向けフィリピン語教材の開発と評価――中学校・高等学校・大学での授業実践から」
『外国語教育のフロンティア』
- 巻
- 1
- 号
- 開始ページ
- 29
- 終了ページ
- 40
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 研究論文(大学,研究機関等紀要)
- DOI
- 10.18910/69776
- 出版者・発行元
- 大阪大学大学院言語文化研究科
論文論文中35ページに用いられている図版は著作権等の都合により非公開本論文の目的は、筆者が作成した子ども向けフィリピン語教材開発の方法論を考察することと、本教材を教材評価の手法によって評価することである。日本の初等中等教育段階の学校ではフィリピンにルーツを持つ子どもが多く学んでいる。フィリピンやフィリピン語について学習する機会を設ける学校もあり、学校や地域で使用できる子ども向け教材が必要とされている。しかし日本国内で利用できるフィリピン語教材は大人向けに作成されており、子ども向け教材の開発は進んでいない。筆者は総合的な学習の時間に使用する目的で、初学者や初級段階の学習者を対象とした子ども向け教材を作成した。教材では、日常生活において身近な人々と基本的なやり取りができるようにするという言語習得面での目標と、言語学習を通して学習者自身やその周囲を見つめ直すという文化理解の両方に重点を置いた。作成した子ども向け教材を実際の授業で使用し、大学生の小集団1つと高校生の小集団2つについてプロトタイプの形成的評価方法による評価を試みた。観察による評価と経過時間の評価では、習慣等と関わりの深い内容が提示されると学習者からの発言が増えること、日常表現の一部は後半の課まで提出されないこと、学習者にとって馴染みの薄い文法事項や語彙の学習では予想時間を超えること等が明らかになった。質問紙調査では、良かった、分かりやすかったという意見が2/3 強を占め、その理由は絵が併記されていること、単語がまとめられていること、表や例文が分かりやすいことであった。一方、日本語訳が併記されていないこと、モノクロ印刷であること、量が多く要点が分かりにくいことが改善点として挙げられた。学習効果を評価する事後テストでは、標識辞や基本文型を理解できているか、身近な場面で日常的によく使われる質問に答えられるかを筆記テストと授業中の口頭での応答によって調べ、どの小集団も50~60%台の得点率であった。今後は学習項目の提出順や語彙と文法事項の精査といった、教材の構造と内容を再考することが必要である。学習効果についても、事後テストの妥当性の再考と、文化理解についての学習効果の評価が必要である。
- リンク情報
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- DOI
- https://doi.org/10.18910/69776 本文へのリンクあり
- CiNii Articles
- http://ci.nii.ac.jp/naid/120006478291
- ID情報
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- DOI : 10.18910/69776
- ISSN : 2433-9636
- CiNii Articles ID : 120006478291
- identifiers.cinii_nr_id : 9000392845519