研究ブログ

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本気で宇宙の研究に関わりたいと考えた時、大学院やその先の進路としてはどのような道が考えられるのでしょうか。

・本気で宇宙の研究に関わりたいと考えた時、大学院やその先の進路としてはどのような道が考えられるのでしょうか。

すでに大学生で、生物を専攻している方からの質問です。
ウエブやreserchmapで宇宙生物学を研究のキーワードに挙げている研究者を検索してみるのがいいと思います。宇宙実験のチャンスは非常に限られていますので、宇宙生物学だけをやっているわけではないということが分かると思います。しかし実験要件の検討や、解析などを手伝ってくれる方がいらっしゃれば、成果に大きく影響します。


例えば、JAXAのウエブページで、実験実施中や解析中となっている研究の内容や、提案者の情報を見てみるとか、http://iss.jaxa.jp/kiboexp/field/scientific/#life

最近宇宙実験をする可能性を検討するテーマとして選定された研究テーマについて調べてみるとか
http://iss.jaxa.jp/kiboexp/participation/application/2016_kibo-utilization-theme_select.html
http://iss.jaxa.jp/kiboexp/participation/application/2015_kibo-utilization-theme_select.html
http://iss.jaxa.jp/kiboexp/participation/application/2014_selected_theme.html
自分の興味と方向性に合う研究を探すことが大切になるでしょう。

必ずしも宇宙を対象にしていない研究をしても、宇宙関係に就職し、貢献している方もいらっしゃいます。大学や大学院で自分が追求したいことを試みながら、しっかり科学の基礎を学び、研究を組み立てる力を養っていくのがいいと思います。
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地球から宇宙への通信はどのくらいかかりますか

国際宇宙ステーションならば、ほぼ通信の時差を感じません。映像と音声が少しずれてるかな、というくらい。

月までだと1秒程度だそうです。画像を送ると10秒くらい。
火星までも20分くらい。そのタイムラグの間、自律的に動くための行動研究がされています。
https://www.mugendai-web.jp/archives/4771

リュウグウを目指すはやぶさ2までも、通信は片道20分かかるそうです。往復40分。
http://fanfun.jaxa.jp/topics/detail/5262.html

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宇宙で実験するとき何に一番気を使っていますか

科学性
実験結果がでるように

運用性
宇宙飛行士が操作を間違わないように

安全性
宇宙飛行士に怪我をさせないように!

無重力の世界を想像して、気体や液体の挙動を予想すること。対照実験区を設けて比較できるようにすること。データ解析に必要なサンプル数を見積もること。
操作しやすい機材の設計にすること。読んで分かりやすい手順を作ること。

そして宇宙飛行士に怪我をさせないこと。
宇宙では、宇宙飛行士が生きて帰るのが一番のミッションです。

宇宙に持っていくものには、とがったところがないように、角を丸めています。
生物サンプルを保存するためには危険な化学薬品も使います。宇宙では絶対に漏れないように3重のシールをもつ設計になっています。

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宇宙でなぜわざわざ生物の実験をするのか

・宇宙でなぜわざわざ生物の実験をするのか、またそうすることで何が得られるのか(重力があるない以外の理由)

 

いろいろな意見があると思いますが、下記私の個人的見解を2点書きます。

 学術の世界では、「新しいこと」を発見するために研究が進められています。

誰もやったことのないことをやることに価値があります。宇宙空間というのは到達するのが難しい世界で、そこで生き物がどうなるかを見ることは誰もやったことがないこと。やること自体に大きな価値があることでした。
現在は国際宇宙ステーションが定常的に運用されており、宇宙で生き物の反応を見るだけでなく、老化に伴って現れる現象が加速するように見える環境を利用したり、製薬に生かす情報を得るなど地球での人間の生活に役立つ研究に重点がおかれています。

 

 もう一つは、国力の主張のためです。第2次世界大戦後、米露はロケット開発競争を始めました。1960年代、国力を主張するために宇宙開発で競いました。その競争が宇宙で生物が生き延びることができる設備、つまり宇宙ステーションやスペースシャトルを作ることにつながりました。
現在、宇宙空間は平和利用するというの国連の条約があり、国際協力しながら技術的には国同士で競って宇宙開発をやっています。人類がまだ行ったことのない場所へ真っ先に行こうとする競争心が、宇宙で生き物の実験をする動機になっていると思います。

 

参考)国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/technology/universe/copuos.html


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宇宙で繁殖してしまった生物や菌類はいますか?

宇宙ステーションには人がいますから、人に付属して菌も繁殖しています。宇宙飛行士の皮膚にいる常在菌の体表面の分布が調べられています。

宇宙ではシャワーを浴びることができず、ウエットタオルでふくだけです。下着も2日に1回程度しか交換しないので、皮膚炎に関係する菌の割合が増えているそうです。ものすごい悪さはしないけれど飛行士はかゆくなっているかもしれません。ただ宇宙飛行士の健康状態の詳細について問題があるかどうかは公開されていません。

 

また、2001年まで15年間あったロシアのミールという宇宙ステーション内では内側の壁などで菌が繁殖していました。かなりかび臭かったという話もあります。ミールの内壁の一部を地球に持ち帰ったところ、新しい菌が多数見つかったということが報告されましたが、宇宙に特有のものではないと結論されていました。地球上には菌類がものすごくたくさんいて、探そうと思えばいつでも新しい菌は見つかるそうです。探す努力が大切ですね。

ちなみに人間にとって有用な菌を探し、多くの有用成分を発見してノーベル賞を取ったのが大村智教授です。

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宇宙に存在する生物と地球に存在する生物とで共通している生物がいますか

地球以外の宇宙に生物が存在するかどうかはまだ分かっていません。
私は広い宇宙のどこかに生き物がいてもいいはず、出会っていないだけと思っています。

ただ、生物がいたとして地球の生物同じような体のつくりなのか、タンパク質やアミノ酸など生体を構成する分子として使っているか、DNAを遺伝情報として使用しているか、そもそもどのような形をしているのか、まったく不明です。

 

宇宙空間でも生き延びた生物として「クマムシ」がいます。クマムシは放射線耐性を持ち、乾燥状態になると低温や真空に非常に強くなることが知られており、宇宙空間でも乾燥状態で生き延びたという実績があります。

 

火星には生命がいるかもしれません。水があるところに生き物がいる可能性があります。火星には無人の探査機が取得した画像分析の結果、水があるかもしれないと言われています。実際には火星のサンプルをその場で分析するか、地球に持って帰ってきて分析することが必要です。分析機器を積んだ無人探査機を打ち上げることや、有人探査計画を実現することで宇宙での生物の探査が進展すると期待されています。

火星の水について

http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/mars.html

 

土星の衛星タイタンには海があるといわれています。

http://www.kids.isas.jaxa.jp/zukan/solarsystem/saturn02.html

 

土星の衛星エンケラドスからは間欠泉(吹き出す水)が観察されています。

http://fanfun.jaxa.jp/topics/detail/10722.html

 

エンケラドスから海水を採取して持ち帰りたいという検討チームもあります。

http://www.isas.jaxa.jp/j/researchers/symp/sss14/paper/P2-156.pdf

 

土星は火星よりさらに遠く、今のところ予算がついていないので実現にはまだまだ時間がかかりそうです。

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宇宙はどんな匂いですか

新しい宇宙船の中は新車のにおい、時間がたった宇宙ステーションは閉め切った部屋と汗のにおいらしいです。

ドラゴン宇宙船

http://www.afpbb.com/articles/-/2880410?pid=9006052

汗のにおい

http://www.kfjc.co.jp/business/jaxa_detail.php?id=01

閉め切った部屋のにおい

http://www.huffingtonpost.jp/hrnavi/space-station_b_7599758.html

 

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宇宙兄弟のタンパク質実験は実現していますか

「宇宙兄弟」というマンガではALS治療のために実験をするというエピソードが出てきます。それは実際に可能で、現実味のある話なのでしょうか。

 

私はマンガ「宇宙兄弟」を読んでいて、大好きです。月面に日本人が降り立つ様子や、月面ローバーの開発、月面での建設の様子など、将来の宇宙探査のイメージが分かりやすく描かれており、楽しいコミックです。国際宇宙ステーションは重力がない、月面には小さい重力があるという差を表現しています。

さて、マンガ「宇宙兄弟」では「宇宙ステーションでALSの治療薬を作る」という話がでてきて、タンパク質を宇宙にもっていくと新薬ができるという印象を受けますが、実際はもう少し複雑です。無重力空間で高品質なタンパク質結晶を生成して、地球に持ち帰ってできたタンパク質構造を解析して、酵素の活性中心にあう薬剤を作ることになります。宇宙にもっていく際に機材に詰め込んだり、審査を受けたり、打ち上げ場まで運んだり、打ち上げた後は宇宙飛行士に装置にセットするなどの操作をしてもらったり、たくさんの苦労があります。地上でも研究者が苦労をして準備作業と解析作業を行っています。宇宙にタンパク質をもっていけば新しい薬ができる、というわけではないのです。

地上でタンパク質を扱うのは研究員の作業です。貴重なタンパク質を取り扱う研究員は、すごく神経を使って作業をしています。とても簡単に言うと、宇宙ステーション内の「熱対流の起きない静かな世界」で、地上で解析しやすいきれいなタンパク質結晶を作る作業ということになりますが、製薬業界からの注目も大きく、実際に成果も出始めています。

 

高品質タンパク質結晶生成実験について

http://iss.jaxa.jp/kiboexp/theme/first/protein/

 

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メダカは重力を感じているのですか

1994年、向井千秋宇宙飛行士が初めてスペースシャトルに搭乗した際、メダカの飼育実験を行い、子メダカが産まれました。宇宙飛行士は船外活動の訓練を水中でしています。このように、水中と宇宙には共通点が多いように思えますが、それでは水棲生物は重力に関係なく生きているのでしょうか?

 

たしかに宇宙で重力がないのと水中で浮力を受けて自由に泳ぎ回るのとで類似点がありますが、魚も地球では水中にいても重力を受けて生活しています。2012年に国際宇宙ステーションで飼育されたメダカの骨代謝実験では、宇宙ではメダカの骨が弱り、その理由は骨を作る細胞より壊す細胞が活発になることが原因であることが分かりました。メダカも重力に応答して生きているということです。

http://www.jaxa.jp/press/2015/09/20150924_osteoclast_j.html

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国際宇宙ステーションは唯一の宇宙ステーションですか?

いま、国際宇宙ステーションは1つですが、宇宙ステーションは1つというわけではありません。だからいつも「国際」をつけてロシアや中国のものと区別しています。

また第2の国際宇宙ステーションを月周辺に作ろうという話が進んでいます。

 

ロシアはかつて、単独で「ミール」という宇宙ステーションを持っていましたが、2001年に太平洋に落下させ15年に渡る運用を終了しました。

http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/mir.html

 

中国も単独で宇宙ステーション「天宮1号」を持っています。

http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/tiangong.html

 

天宮1号は2018年初頭に地球に落ちてくるという情報がありますが詳細は不明です。

http://www.huffingtonpost.jp/2017/10/14/tiangong-1_a_23243196/

 

現在の「国際宇宙ステーション」は2024年までの運用となっています。あと7年です。そのあとは民間に運用を委託するという話もあります。

その先の宇宙探査をどうするかという議論が活発になってきています。

文部科学省では、2020年代に、月周辺に第2の国際宇宙ステーションを作ろうという計画(深宇宙ゲートウェイ)に参加することを検討中です。2020年代には月面基地、2050年代には火星に有人基地ができているかもしれません。

 

実現するためには、国の財政状況と国民の理解と応援が大切になるのではないかと思います。

 

深宇宙ゲートウェイ

https://moonstation.jp/blog/lunarexp/japan-to-join-deep-space-gateway-anticipating-lunar-exploration-by-japanese-astronauts

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