共同研究・競争的資金等の研究課題

2015年6月 - 2020年3月

多細胞組織に立体形状が作られる力学原理の数理

日本学術振興会  科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
  • 井上 康博

課題番号
15H05861
配分額
(総額)
71,110,000円
(直接経費)
54,700,000円
(間接経費)
16,410,000円

H30年度は、上皮組織の高次の折り畳み構造の形成過程を明らかにすることを目的に、折り畳み構造の特徴である折り畳みの皺パターンと皺の空間スケールの決定について、組織周囲の物理的環境と細胞活動の力学的影響を検討した。一般に、成長する上皮組織には、弾性エネルギーが蓄積されるため、座屈による面外変形が生じることが予想される。まず、3Dバーテックスモデルにより、成長する上皮組織の多細胞力学シミュレーションを行った結果、このような座屈による面外変形が生じることを確認した。したがって、高次の座屈モードの発現が高次の折り畳み構造の形成と関連していると考えられた。そこで、次に、上皮組織の面外変形が周囲組織の物理的な接触によって抑制されることを考慮するため、面外変形に対する復元力を3Dバーテックスモデルに導入した。本モデルを用いてシミュレーションを行った結果、成長する上皮組織には、高次モードの座屈により、皺のように、陥入が短い波長の繰り返しとして見られる折り畳み構造が自発的に形成されることがわかった。さらに、細胞分裂の配向下では、平均して分裂軸に垂直に折り畳みが生じることがわかった。H31年度に、定量的な関係を解析し、国際英文誌に投稿する予定である。また、本計画研究の発展として、新たな共同研究を展開し、収れん伸長における細胞移動のメカニズムに迫った。実験生物学とバーテックスモデルを用いた数理モデリング・シミュレーションの融合により、細胞個々に発生する収縮力の強弱が、時間的に変動するだけでなく、ある位相差で振動することが、物理的に接し合う多細胞ネットワーク内の細胞移動の効率化に重要であることが示された。本成果を国際英文誌において発表した。