2001年 - 2003年
鼓膜の陥凹・癒着と真珠腫進展への促進ならびに阻害因子の研究
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
真珠腫の進展機序として陥凹嚢内へのdebris蓄積とそこへの感染の惹起であり、さらに産生されたIL-1αを主体としたサイトカインのdebrisへの蓄積があげられる。また真珠腫上皮では角質層消失など表皮のバリアー機構は一部傷害され、感染の影響を受けやすくなっていて、扁平上皮側からの刺激によっても上皮下の線維芽細胞や単核系細胞が刺激され、表皮下層の細胞間隙の開大と部分的な基底膜の構造変化により表皮が増殖亢進する。さらにサイトカインネットワークなどの関与で表皮と表皮下組織のcross-talkにより表皮の増殖が誘導されるなど炎症の悪循環で真珠腫進展が起ると推測される。とくに真珠腫上皮下の線維芽細胞は表皮細胞の増殖や炎症の遷延化を誘導する役割を担っている可能性が示唆された。また真珠腫では増殖の分だけアポトーシスも起きているとも推測されるが、分化・細胞死に関する機構に破綻はない。また臨床的な耳管機能の結果からは真珠腫形成や真珠腫の術後の鼓膜陥凹の成因として耳管狭窄が不可欠であるという確証は得られなかった。進展予防に関しては、debris除去や抗菌剤、ステロイド点耳による局所の炎症のコントロールや感染防御が最も重要となる。ステロイドはIL-1αやIL-6など炎症性サイトカインの産生を抑制することが証明された。
生理機能を有する粘膜上皮の早期再生は術後成績を左右する重要因子である。人工的に作成した三次元粘膜上皮の培養実験ならびに粘膜移植の動物実験を行った結果、人工粘膜は基底膜の形成、粘液産生を示唆するムチン遺伝子の発現を認め、形態的にも機能的にも生体の中耳粘膜と近いことが証明された。また自己の細胞から作成した三次元粘膜上皮の露出骨面への移植が、粘膜形態を早期に再生させ、さらにガス交換能の検討では、生理的な機能を保つことが理解され、今後の臨床への応用が期待された。
生理機能を有する粘膜上皮の早期再生は術後成績を左右する重要因子である。人工的に作成した三次元粘膜上皮の培養実験ならびに粘膜移植の動物実験を行った結果、人工粘膜は基底膜の形成、粘液産生を示唆するムチン遺伝子の発現を認め、形態的にも機能的にも生体の中耳粘膜と近いことが証明された。また自己の細胞から作成した三次元粘膜上皮の露出骨面への移植が、粘膜形態を早期に再生させ、さらにガス交換能の検討では、生理的な機能を保つことが理解され、今後の臨床への応用が期待された。
- ID情報
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- 課題番号 : 13671805
- 体系的課題番号 : JP13671805