共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年4月 - 2023年3月

多原子共鳴を利用した新しい構造解析

日本学術振興会  科学研究費助成事業  基盤研究(C)

課題番号
20K12485
体系的課題番号
JP20K12485
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
3,900,000円
(直接経費)
3,000,000円
(間接経費)
900,000円

本研究は、多原子共鳴現象を利用して、「隣接元素を特定できる」新しい構造解析法を確立することを目標とし、令和2年度より3年計画で行っている。
2年目の令和3年度は、二元系のシリコン化合物である二酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(Si3N4)などについて、一方の元素の内殻電子を共鳴励起したときに、相手側の元素から放出される光電子強度の変化について検討した。SiO2微粒子とマトリックス物質である窒化ホウ素(BN)微粒子を混合して加圧したペレット状試料について、放射光を用いてSi 1s電子を共鳴励起した結果、Si 1s→3p*の共鳴励起エネルギー(1848 eV)において、O 1sの光電子強度が13%減少した。この強度変化は、測定深度の変化による効果(マトリックス効果)によるものではなく、多原子共鳴効果に起因するものであることを計算により確認した。一方、このエネルギーにおいて、マトリックス元素から放出されるB 1s、N 1sの光電子強度に変化は認められなかった。これらのことから、多原子共鳴は、Siと直接結合したO原子のみで起こり、Siと直接結合していない(原子間距離の大きい)BやN原子では起こらないことがわかった。同様の結果は、Si3N4微粒子とマトリックス物質であるセルロース((C6H10O5)n)微粒子の混合ペレットについても認められた。
これらの結果から、前年度に見出された蛍光X線放出と同様、光電子放出においても多原子共鳴効果が認められ、それは共鳴励起される元素と直接結合した原子のみで起こることがわかった。これらの事実から、3元系以上の複雑な物質であっても、多原子共鳴を利用することにより、特定の元素に隣接する元素の種類を特定できる見通しを得た。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20K12485
ID情報
  • 課題番号 : 20K12485
  • 体系的課題番号 : JP20K12485