2021年3月
遺伝子改変メダカを用いた骨折治癒過程における髄鞘と骨芽細胞の機能解明
日本骨形態計測学会雑誌
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- 巻
- 31
- 号
- 1
- 開始ページ
- 25
- 終了ページ
- 29
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- 日本骨形態計測学会
本研究では、半透明なメダカの遺伝子を改変することにより有髄神経を構成する髄鞘と骨形成を行う骨芽細胞を可視化させることで骨折治癒過程における髄鞘と骨芽細胞の挙動を解明することを目的とした。髄鞘マーカーであるmpz(myelin protein zero)のpromotorによりEGFP(enhanced green fluorescent protein)を発現させ、骨芽細胞マーカーであるosterixのpromotorによりDsRedを発現させたmpz-EGFP/osterix-DsRedダブルトランスジェニックメダカを作製し、そのメダカの尾ビレを構成する鰭条骨を骨折させることで髄鞘と骨芽細胞の挙動を観察した。髄鞘(mpz+細胞)はメダカの脳、脊髄、および尾ビレの鰭条骨で発現し、神経細胞に沿って局在することが観察された。また、骨芽細胞(osterix+細胞)は頭部の鰓蓋骨や体部の脊椎骨、そして尾鰭を構成する鰭条骨で発現し、骨組織表面に局在していた。このメダカを用いた鰭条骨での骨折実験では4日目〜28日目にかけて髄鞘は神経に沿って骨折部の近位から遠位方向へ骨折部を包み込むように新生mpz+細胞が出現し、増加・伸展した。一方、骨芽細胞は骨折4日〜14日にかけて骨折部での増加を認め、その後減少した。この時、mpzの発現を阻害するmTOR(mechanistic target of rapamycin)阻害薬であるラパマイシンは新生mpz+細胞が出現を阻害し、同時に骨芽細胞の増加も抑制した。ラパマイシンにより骨折修復が遅延し、骨癒合不全を起こすことがわかった。本研究によって骨折修復における髄鞘と骨芽細胞の挙動が明らかとなった。また、骨折修復過程における髄鞘と骨芽細胞の集積にはmTORシグナルの関与が示唆された。今後は骨折治癒過程における髄鞘と骨芽細胞との関わりにおいて、細胞同士のシグナル伝達などさらなる機能解明が期待される。(著者抄録)
- ID情報
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- ISSN : 0917-4648
- 医中誌Web ID : 2021205320