基本情報

所属
独立研究者
学位
修士(社会学)(2018年3月 東京大学)

J-GLOBAL ID
202001021005106684
researchmap会員ID
R000005672

 2024年3月末で博士課程を満期退学し、独立研究者として博士論文の執筆を続けています。

 2024年6月より営利企業で、日本企業のダイバーシティ&インクルージョン(D&I)推進のための事業に携わっています。

 

【戦争体験とD&Iを結びつける問題意識】

 研究活動のテーマであるシベリア抑留体験と、現在仕事のテーマとしているD&Iとは、直接的には接点がなさそうです。私がこれまで書いた論文には、D&Iに関連するものとして読める部分は皆無です。ですが私の問題意識の土台において、両者には重要なつながりがあります。

 それは、社会を構成する主体としての意識をどう持ちうるか、という問いです。シベリア抑留体験を考察する中で、戦争責任を今日の私たちが引き受けることを大きな課題として感じるようになりました。戦争を引き起こした社会状態にプロテストし続けることは、研究上の関心でもあり、後述するような生活上の実践としての関心でもあります。

 他方のD&Iについての私の関心は、マジョリティとしての社会的責任を核としています。現在働いている企業では「誰もがマイノリティ」であることへの共感を求めてD&I推進の必要性を訴える方向性を採っていますが、私がより重要だと考えるのは、自分の特権に自覚的になり、その特権を生んでいる社会構造に社会の一員としての責任感を持つことです。

 前述の「戦争を引き起こした社会状態」には、たとえば外国にルーツのある人への差別や、かれらを日本社会から排除することなどがあります。しかし誰かを”私たち”の外側に位置づけ排除することは、外国人に限らず様々な社会的マイノリティに対し、共通する構造を持ってなされることです。

 社会構造を維持し強化する主体としての自己を意識し、その社会構造がもたらす不平等を変えるためにどのような実践が可能かを問い続けることが、戦争体験とD&Iという2つのテーマに共通する私の課題です。

 

【企業で働くことを選んだ理由】

 アカデミックポストをめざさず、企業で働くことを希望した理由は2点あります。

 1点目は、社会学を通じて得られたものを生活の中で実践することが、社会に対する責任を果していくことにつながると考えたことです。私にとって社会学とは、生きるための指針のような意味を持ちます。社会学と出逢う前の私は、過去の戦争以外に関心がなく、非常に盲目的でした。大学院の研究室での関わりや社会学の学びをとおして、戦争以外の様々な社会問題の存在や、その存在に気づかずにいられた自分の特権を意識できるようになりました。社会学によって、社会の一員としての責任感を身につけたとも言えます。その責任意識を持って社会学を実践的に生きることが、私にとって”社会学者であること”だと今は考えています。

 2点目は、研究を事業としない企業にも、博士課程まで修めた人がいるべきだと感じたことです。博士課程2年目に体調上の理由で大学院を休学し、興行を事業とする企業で働き始めたとき、科学的知識や学術的議論への関心が全く共有されていないことに驚きました。それまでは漠然と、民間シンクタンクの研究員なども進路の候補として考えていましたが、研究とは無縁にも見える企業組織に身を置くことで、大学の内側で生まれた学問の成果を大学の外側で役立てるために何かできることがあるだろうと考えました。学術研究を社会につなげていくためには、大学の外側にいてそれを受けとめる人も必要なはずです。


委員歴

  2

論文

  2

MISC

  7

書籍等出版物

  2

講演・口頭発表等

  3

社会貢献活動

  3

メディア報道

  1

その他

  1