MISC

2015年

体感型住環境教育の長期的効果

日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
  • 飯野 由香利

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開始ページ
110
終了ページ
110
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.11549/jhee.58.0_110
出版者・発行元
日本家庭科教育学会

<br><br><b>【背景と目的】</b><br><br>座学等の受動的な学習に比べて体験型学習は児童・生徒が能動的に行動することから、児童・生徒は学習内容に興味・関心を持つことができる傾向がある。体験型学習直後における理解度の向上等の効果を示した既往研究はあるものの、経年後に知識の定着や家庭実践などの教育的効果を検討した研究は少ない。<br><br>一方で、東京都杉並区のエコスクール推進事業では、施設整備だけでなく、環境負荷の抑制に繋がる環境配慮行動を養成するための「住環境学習プログラム」(体験型授業)が行われて来ている。区内のO小学校(エコスクール)とS小学校の3~6学年の児童は、本学習プログラムを通して、家庭科の住領域で扱う暑さや寒さ、風通し及び明るさ等の住環境や環境保全と関連した内容を学んでいる。<br><br>本研究では、これらの児童が進学した4つの中学校において、住環境に関する知識や家庭での環境調節行動に関するアンケート調査を行った。学習後1~5年経った時点における「住環境学習プログラム」で体験した生徒(PG体験生徒)の知識の定着状況と家庭での環境調節行為等の実践について、学習プログラムを体験していない生徒(一般生徒)と比較検討することにより、体験型学習の長期的な教育効果を明らかにすることを目的とする。<br><br><b>【方法】</b><br><br>2014年11月中旬~12月上旬に、東京都杉並区立O・S小学校出身者を含む4中学校(A・B・C・D中学校)の全生徒を対象にアンケート調査を行った。A・B中学校の全学年とC・D中学校1年生が光環境を除く全学習プログラムを体験し、後者2校の2・3年生は一部のみ体験している。アンケートの内容は、身近な住環境やエコスクール施設に付随する建物の工夫に関する用語や事柄の認知度、それらの情報源及び家庭での環境調節行動の実践に関してである。アンケート用紙は対象校に郵送で配布して直接回収した。回収率は約93%で、787人のデータを得た。<br><br><b>【結果】 </b><br><br><b>1)</b><b>エコスクールの効果</b> PG体験生徒であるO・S小学校出身生徒のエコスクールに付随する建物の工夫に関する用語や事柄の認知度(「説明できる」と回答した生徒の割合)を見ると、エコスクールであるO小学校出身生徒の認知度は、S小学校出身生徒より全項目において高く、特にエコスクールに付随する項目の認知度において顕著に高い。<br><br><b>2)</b><b>知識の定着 </b>上記用語や事柄の認知度(「聞いたことがある」または「説明できる」と回答した割合)は、一般生徒と認知度に相違がなかった「すだれ」や「緑のカーテン」を除くと、PG体験生徒の方が高い。また、これらの用語や事柄についての情報源を見ると、PG体験生徒の場合、いずれの項目も「小学校で習った」割合が35%以上で「テレビで知った」割合(10%以下)より高い。一方、一般生徒の場合には、「小学校で習った」割合が「緑のカーテン」を除くと20%以下で、「テレビで知った」割合も20%以下と全般的に低い。<br><br><b>3)</b><b>家庭実践 </b>夏季と冬季における家庭での環境調節行為毎の頻度の平均値をPG体験生徒と一般生徒別に検討した。夏季・冬季ともにPG体験生徒と一般生徒の頻度に相違はほとんどなかった。環境調節行為に影響を与えた事柄を見ると、「家族がしていた」という割合は夏季・冬季ともに50~60%と高く、「小学校で習った」という割合は夏季に40%以下で、冬季に10%前後で低い。PG体験生徒の場合、「打ち水をした」割合が「家族がしていた」割合より「小学校で習った」割合が高い。<br><br><b>4)</b><b>まとめ</b> 本研究から、以下の知見を得た。①体験学習をした生徒の方が「説明できる」と回答した割合が体験していない生徒より高いことから知識の定着に繋がっている。特に、エコスクールで学習していた生徒にとって、学内の環境に配慮した施設を見聞するなどの体験が知識の定着に大きく寄与している。②家庭での環境調節行為等の実践では、体験学習の有無にかかわらず、家族の行為の影響の方が小学校で習ったことより大きい。

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.11549/jhee.58.0_110
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130005484984
ID情報
  • DOI : 10.11549/jhee.58.0_110
  • CiNii Articles ID : 130005484984
  • identifiers.cinii_nr_id : 9000347199037

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