MISC

2017年

1/10住宅組立模型を用いた太陽軌道装置の開発と採光実験

日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
  • 広川 智子
  • ,
  • 飯野 由香利

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開始ページ
34
終了ページ
34
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.11549/jhee.60.0_34
出版者・発行元
日本家庭科教育学会

<strong>【研究の背景と目的】</strong> <br />本研究では、中学生を対象としたアンケート調査から得られた多くの生徒が光環境をさほど意識して生活していないという実態を踏まえて、光環境教育を試みることとした。本研究では、中学生に太陽の軌道に伴う季節、時間毎の光環境の原理を理解してもらい、窓の配置別採光状況について学習してもらうことを目的として、1/10の住宅組立模型を用いた太陽軌道装置を開発して、採光に関する予備実験と授業実践を行った。<br /><strong>【</strong><strong>方法と結果</strong><strong>】</strong><br /><strong>1)</strong><strong>1/10</strong><strong>住宅組立模型を活用した太陽軌道装置の開発</strong><br /> 太陽軌道装置は縮尺1/10住宅組立模型を利用し、太陽を軌道に沿って季節や時間毎に変化させることのできる装置である。本装置は太陽高度を新潟県長岡市の緯度(37°)を基準に求めた夏至、春分・秋分、冬至に変更でき、太陽(ハロゲン電球)を軌道(半円に曲げた鉄パイプ)に沿って動かしてクリップで固定できるようにした。<br /><strong>2)</strong><strong>採光に関する予備実験の概要</strong><br />模型の8畳室の南面の窓近傍と室中央の2地点に照度計を設置して、形状と開口面積が同じ側窓・高窓・天窓を設置した直達日射時の照度を測定した。<br /><strong>3)</strong><strong>採光に関する授業実践</strong><br />2016年9月21日に長岡市立A中学校の3年生1クラス23人を対象に、採光に関する実験を行った。各班は3~4人で構成し、7班で実験などを行った。また、授業前後にアンケート調査を行った。実験方法は、天空日射(教室のロールスクリーンを下げて人工照明の直下に装置を配置)時における窓の配置(側窓・高窓・天窓)別に模型内の2地点(窓近傍、中央)で照度を計測した。計測した結果を大学生がグラフ化し、講師が説明した。<br /><strong>4)</strong><strong>予備実験と授業時の実験結果</strong><br />天空日射の窓の配置別の照度と直達日射の各季節と時間毎の採光実験を行った。天空日射の採光実験では、窓近傍は側窓が高く、室中央は天窓が高い結果となった。直達日射の採光実験では、南面の窓近傍の照度が高いのは冬至の側窓と春分・秋分の高窓であるのに対して、室中央で最も高いのは夏至時の天窓設置時であった。側窓での季節・時間毎の直達日射の入射状況から、夏至においては窓近傍に微かな光の侵入を確認でき、冬至において室内中央奥まで広い面積で光が侵入した。<br /><strong>5)</strong><strong>アンケート結果</strong><br />実験結果の理解度を確認した結果、天空日射時の模型内の窓近傍と中央地点での照度が最も高い窓の種類別回答を見ると、天窓の正答率は91%で高かったが、側窓は67%で、高窓の明るさについては約1/3が不正解であった。授業前後における室中央地点で天窓が明るいと挙げた割合は講座前の67%に対して、講座後には86%に上昇した。これは目視で確認し、測定結果をグラフ化して考察を行ったことによると考えられる。さらに、窓面の方位や時間帯による採光状況の違いや直達日射や天空日射の相違に関する理解度は、「とても理解できた」と「少し理解できた」の合計割合が100%だった。方位や時間による採光状況の違いの理解度は「とても理解できた」割合が57%以上なのは太陽軌道装置の太陽を手で動かしたことで、方位や時間帯による光の相違を認識したためと推定される。さらに、模型を用いることの有効性について100%の生徒が分かりやすいという回答しており、その理由として「様々な窓を取り付けられる」が52%、「模型内の様子が見える」が43%であった。しかし、照度計測を挙げた割合は22~30%であった。<br /><strong>【</strong><strong>まとめ</strong><strong>】</strong><br />開発した太陽軌道装置を用いて1/10住宅組立模型内への採光に関する予備実験と授業で実験を行った結果、側窓・高窓・天窓設置時の天空日射時と直達日射時の侵入光を目視で確認し、照度を計測して結果を図化したことにより、窓の配置による室内の採光状況の相違を理解できたことを確認した。<br /><strong>謝辞</strong><br />本研究を行うに当たり、科学研究費助成事業(基盤研究(C) 課題番号15k00925 代表者 後藤哲男)の研究助成と公益財団法人建築技術教育普及センターの普及事業、日本建築学会北陸支部奨励研究の助成を受けました。<br />ここに深謝の意を表する。

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.11549/jhee.60.0_34
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130005966555
ID情報
  • DOI : 10.11549/jhee.60.0_34
  • CiNii Articles ID : 130005966555
  • identifiers.cinii_nr_id : 9000362822928

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