MISC

2017年

学習内容や方法別にみた防災教育の有効性の検討

日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
  • 飯野 由香利

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記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
日本家庭科教育学会

<b>【研究の背景と目的】</b><br /><br />近年、様々な災害が多発し、避難訓練や防災教育を年に数回行う学校が多い。しかし、教員が防災教育の内容を計画する必要があるが、教員養成課程で防災教育に関する十分な知識や技能を習得しているとは言い難い。さらに、防災専門の講師や地域の方々などの学外者が関わることが多い。このような実践において、防災教育方法の有効性は明らかになっていない。<br /><br />そこで本研究では、新潟県H市立の小学校で行われている防災教育の実態を把握し、出身小学校で学んだ防災教育の内容について中学生の記憶や理解度を考察することにより防災教育方法の有効性を明らかにすることを目的とする。<br /><br /><b>【ヒアリング調査の概要】</b><br /><br />過去に水害被害の多かった新潟県H市立の5つの小学校と2つの中学校を2017年7月に訪問して、管理職や防災教育担当教員に学校が行っている防災教育の内容や教育方法及び計画方法等の実態についてヒアリング調査を行い、資料を収集した。<br /><br /><b>【アンケート調査の概要と分析方法】</b><br /><br />2017年7~8月に5校の101人の教員と2校の344人の中学生を対象にアンケート調査を行った。アンケートの内容は、防災教育で行った内容と理解度、理解別理由、地震発生時の行動及び防災設備などである。中学生が小中学校で習った防災教育がどの程度記憶に残り、理解できていたのかを明らかにするために、出身小学校時で受けた防災教育の内容や記憶に残っていることや理解度などについて回答してもらった。一方で出身小学校の教員にはこれまで行っている防災教育の実践内容と実践方法及び防災教育時の問題点などについて回答していただいた。<br /><br />教員用と生徒用のアンケートでの質問の内容をほぼ類似して作成し、両者の回答を比較して分析した。防災教育内容については25個の質問項目を設け、「自助・共助」、「災害被害」、「災害の仕組み」、「災害対策」、「災害時対応」、「災害後対応」、「防災設備」の7グループに分類して分析した。さらに、防災教育方法として、DVD学習、調べ学習、グループ学習、体験型学習、学外講師による指導、課外授業などで尋ね、DVD学習、調べ学習、グループ学習、体験型学習を中心に分析した。<br /><br /><b>【結果】</b><br /><br />以下に得られた知見を示す。<br /><br />1)防災教育の内容で、「災害時の対応」と「災害対策」及び「自助・共助」を行っている学校が多いのに対して「災害後の対応」を行っている学校は少ない。<br /><br />2)防災教育内容別に教育方法を見ると、「災害の仕組み」はDVD学習が多く、「災害後の対応」はグループ学習を行う学校が多く、「災害対策」は体験型学習が多い。<br /><br />3)ほとんどの教育内容についての生徒の理解度は60~70%で、教員の推定する生徒の理解度とほぼ近似しているが、学校により理解度にばらつきが多少ある。<br /><br />4)理解しやすい教育方法として、教員は体験型学習を挙げているのに対して、生徒は調べ学習やDVD学習を挙げている。調べ学習やDVD学習で行った「災害被害」「防災設備」の理解度は高い傾向になった。また、専門用語を話す学外講師の話に対する生徒の理解度はやや低い傾向が見られた。<br /><br />5)防災教育を行う際に、体験型学習を多く行っている学校では、3割以上の教員が計画の困難さを訴えており、4割以上の教員が指導時間や指導内容の考案時間の確保が難しいという問題点を訴えている。

リンク情報
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130006441953
ID情報
  • CiNii Articles ID : 130006441953
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