2020年7月 - 2023年3月
化学反応で張力を発現する「分子ひも」の開発
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) 挑戦的研究(萌芽)
1年目に発見した高い張力を内在した大環状化合物であるCalix[3]pyrroleについての研究を引き続き行い、1,4-ジケトン部位のピロール環形成による鎖長短縮反応による合成および、環構造にかかった高い張力に由来して容易に酸開裂反応を起こすことまでをまとめ、トップジャーナルであるJ. Am. Chem. Soc. 誌に報告した。
さらに、同様の鎖長短縮反応を用いてpyrroleとfuranの双方を含んだCalix[3]heteroarene類の合成も行い、これらの反応性から環状化合物の張力が評価できることを明らかにした。Calix[3]pyrrole, Calix[1]furan[2]pyrrole, Calix[2]furan[1]pyrroleの順に結晶構造における環歪みが共に大きくなっており、この歪みの大きさと同じ順で酸開裂の速度が速くなることを明らかにした。これによってC―C結合にかかる張力の大きさとC-C結合開裂反応の速度との相関関係を体系的にまとめ上げている。張力を駆動力とした開裂反応にでは、十分に高い反応性を保ったままの鎖状活性中間体が得られる。これを3つのヘテロ芳香環ユニットを持つビルディングユニットとして取り扱うことで、Calix[6]heterole類への変換も達成した。これまでのカリックスピロール合成では、エントロピー的に有利な生成物を化学平衡を通して得ることが主流であったが、この歪み誘起環拡大反応では、歪みエネルギー(エンタルピー)を使ってエントロピー的に不利な巨大環状化合物が合成できることが新しい。
今後さらなる張力を利用する本反応の適用範囲の拡張、および張力に由来する反応性の関係性の定量的な評価を目指す。
さらに、同様の鎖長短縮反応を用いてpyrroleとfuranの双方を含んだCalix[3]heteroarene類の合成も行い、これらの反応性から環状化合物の張力が評価できることを明らかにした。Calix[3]pyrrole, Calix[1]furan[2]pyrrole, Calix[2]furan[1]pyrroleの順に結晶構造における環歪みが共に大きくなっており、この歪みの大きさと同じ順で酸開裂の速度が速くなることを明らかにした。これによってC―C結合にかかる張力の大きさとC-C結合開裂反応の速度との相関関係を体系的にまとめ上げている。張力を駆動力とした開裂反応にでは、十分に高い反応性を保ったままの鎖状活性中間体が得られる。これを3つのヘテロ芳香環ユニットを持つビルディングユニットとして取り扱うことで、Calix[6]heterole類への変換も達成した。これまでのカリックスピロール合成では、エントロピー的に有利な生成物を化学平衡を通して得ることが主流であったが、この歪み誘起環拡大反応では、歪みエネルギー(エンタルピー)を使ってエントロピー的に不利な巨大環状化合物が合成できることが新しい。
今後さらなる張力を利用する本反応の適用範囲の拡張、および張力に由来する反応性の関係性の定量的な評価を目指す。
- ID情報
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- 課題番号 : 20K21214
- 体系的課題番号 : JP20K21214