共同研究・競争的資金等の研究課題

1990年 - 1992年

クラウンゴール腫瘍形成初期過程の分子論的研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 一般研究(A)  一般研究(A)

課題番号
02404003
体系的課題番号
JP02404003
配分額
(総額)
32,100,000円
(直接経費)
32,100,000円

本年度は以下のような成果を挙げた。
(1)植物シグナルのAgrobacteriumへの伝達様式:
VirAタンパク質は、vir遺伝子が植物のシグナル物質(フェノールと糖)に応答して発現するための膜結合型のセンサーである。virA遺伝子にin vitroで点突然変異を導入し各ドメインの機能を解析した。その結果、ペリプラズムドメインとTM2膜結合ドメインは糖シグナルの伝達に関与していること、TM2と細胞質ドメインとの境界領域から細胞質側はフェノールシグナルの伝達に関与していることがわかった。
糖に応答しないvirA遺伝子の変異株から、糖に応答するにようになったchvE遺伝子のサプレッサー変異株を分離できた。このことは、ChvEタンパク質とVirAタンパク質が直接相互作用していることを示している。
(2)T-DNAのAgrobacterium細胞から植物細胞への移動の仕組み
我々は、T-DNAのAgrobacteriumから植物細胞への移動頻度を測定する方法を開発し、この方法により、vir領域の遺伝子のうち、virBのすべての遺伝子virD4は移動に必須であること、virE2は必須ではないが移動を促進していることを示した。
(3)T-DNAの植物染色体への組み込み機構
我々はすでに、T-DNAの組み込みにはT-DNAと染色体の間に短い塩基配例上の類似性が重要であることを提唱しているが、新たに解析した組み込み部位周辺の構造からもそのことが裏付けられた。
二つの別個の染色体上のT-DNAのすぐ近傍には共通な反復配列が存在していた。我々はこの反復配列がSINE(Short Interspersed DNA Element)であることを証明した(これをTS familyと命名した)。その分子構成は、全体としては動物のものとほとんど同じであったが、植物に固有と思われる特徴を有する。今後の興味深い問題は、TS familyとT-DNAの組み込みとの間に何等かの関連があるかどうかという点である。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-02404003
ID情報
  • 課題番号 : 02404003
  • 体系的課題番号 : JP02404003