MISC

2011年

東南アジアにおけるアカシア植林が多孔菌類の群集構造に及ぼす影響

日本菌学会大会講演要旨集
  • 山下 聡
  • ,
  • 吉村 剛
  • ,
  • 本田 与一
  • ,
  • 服部 武文
  • ,
  • 土居 修一
  • ,
  • 服部 力

55
0
開始ページ
27
終了ページ
27
記述言語
日本語
掲載種別
研究発表ペーパー・要旨(全国大会,その他学術会議)
DOI
10.11556/msj7abst.55.0.27.0
出版者・発行元
日本菌学会

大型菌類の群集構造は,森林の状態をよく示すとされ,指標生物として注目されている.アカシア植林は,東南アジア地域内で広く行われている土地利用の一つであるものの,多孔菌類群集に対するインパクトは十分に評価されていない.そこで本研究では,東南アジア熱帯地域の3 カ国において,アカシア植林地と原生林との間で多孔菌類の群集構造を比較し,アカシア植林の影響を評価することを目的とした.調査は2008 年と2009 年にマレーシア国サバ州で,2009 年にベトナム国ビンフック省およびドンナイ省で,2010 年にタイ国ナコンラチャシマ県で行った.3年生から25年生のアカシア植林地内に各1ヶ所,自然林内に各2 ヶ所のプロットを設定した.プロット内に60m×4m のライントランセクトを3本設置し,発生していた子実体を採集し,種まで同定した.マレーシアでは38 種,ベトナムでは23種,タイでは24種の多孔菌類が採集された.Microporus xanthopus は全ての調査地の自然林で優占的に認められた.アカシア植林地ではFlavodon flava やHexagonia cf. tenuis が優占する例が認められた.菌類の種数を調査地ごとに林分間で比較したところ,タイにおいては,3 年生林では1種,5 年生林では2 種,25 年生林と自然林では10~11 種が認められ,有意に異なった.これに対して,マレーシアとベトナムでは調査林分間で有意差が認められなかった.アカシア植林による環境の改変,特に乾燥化と枯死木量の変化が種多様性に影響を及ぼしているものと思われる.一方,種構成についてNMDSにより比較したところ,アカシア植林地と自然林の間で種構成が異なった.また,両森林タイプ間における種構成の差は,タイとベトナムでは小さく,マレーシアでは大きかった.タイやベトナムに分布する菌には,高い乾燥耐性を持つような選択圧がかかっている一方で,マレーシアでは,そのような選択圧が強くかかってこなかったと考えられ,このことが熱帯季節林と熱帯多雨林でアカシア植林に対する種構成の反応に差を生む要因となっているものと思われる.

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.11556/msj7abst.55.0.27.0
J-GLOBAL
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201102202138916407
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130007004851
ID情報
  • DOI : 10.11556/msj7abst.55.0.27.0
  • J-Global ID : 201102202138916407
  • CiNii Articles ID : 130007004851

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