研究ブログ

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ことばも心も「通じる」英語の話し方 の出版にあたって

音声学を専攻しながら、私は英語圏での長期留学経験もなければ、大学まで、発音に関する教育もほとんど全く受けたことがありませんでした。そして、英語の発音や話し方に苦労する中、約25年間、日本語と英語の話し言葉がどのように違うか、日本人の英語は英語母語話者の英語とどのように違うかを、録音した音声波形の分析や知覚実験により実証的に研究してきました。

長年の研究によって、日本人の英語の発音にはどのような特徴があり、それがコミュニケーションにどのような影響を及ぼすかについて、多くの興味深い知見を得ることができました。しかし、それらの発見は、一般の人々や英語の教育現場にいる小学校、中学校、高校などの先生方には伝わっていません。従って、本書は、今までの研究で分かったことを、英語に関わっている一人でも多くの人に伝えるため、音声学の専門用語を使わず、平易なことばで解説した本です。

本書は、日本語と英語の話し言葉の違いを、客観的データに基づき解説し、日本人が英語を話すことが難しいと感じられる謎を解き明かし、日本人の英語を話すことに対する漠然としたコンプレックスと思い込みを払拭しようとするものです。そして、留学しなくても、日本に居ながらにして、英語でことばも心もはっきり自信を持って伝えるようにしようとするものです。

また、従来の英語音声学の本の多くが、英語を母語とする英米人が書いた内容に基づいているのに対して、本書は日本語と日本人英語の音声的な特徴から、日本人が英語を話すとき特に注意すべきコミュニケーション上きわめて重要な点を取り上げ、それを改善するための練習法を提供するものです。

従って、この本を一人でも多くの英語に関わる方に読んでいただき、日本人の英語を話すことへの意識を変えていければと思っています。さらに、小学校英語から中学校・高校における英語教育でも活用していただき、日本の英語教育における発音やスピーキング指導にも役立てていただければと願っています。

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