論文

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2015年

高等教育における日本語学習再考―言語学習と学習者のアイデンティティー

Journal CAJLE
  • 米本和弘

16
開始ページ
1
終了ページ
21
記述言語
日本語
掲載種別
研究論文(学術雑誌)

高等教育における言語教育の目的は、研究、もしくはスキル習得かという二項対立的な議論がしばしばなされるが、学習者の情意的目標や主体性が見落とされ、言語能力に焦点が当てられがちになることがこれらに共通する問題点として挙げられる。本研究は、質的調査法を用い、高等教育における日本語学習の情意的側面を探った。カナダのフランス語圏にある英語系の大学で学ぶ4名の学習者を対象に半構造化インタビューを行った。データ分析の結果、文化への興味や日本での生活経験などを契機に、日本語学習を始めていたが、学習が進むにつれ、わかる喜びや自己探求、自己実現へと焦点を移していた。本研究では、公教育の場であっても、学習者の学習目的は文化資本の獲得、蓄積という枠を越え、アイデンティティなど情意的側面にまで及んでいることが明らかになった。このことから、高等教育の言語教育は言語能力や文化的知識に焦点を当てるという前提は、言語学習の情意的側面を重視する学習者とは相容れない可能性がある。この点で、今後、さらに言語学習の情意的側面を探る必要があると言える。

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URL
https://www.cajle.ca/journal-cajle/ournal-cajle-volume-16-2015/#toc2 本文へのリンクあり

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