2021年3月
自己記入式アンケートを用いた、歯科医師の外来診療における抗菌薬処方実態を明らかにするための横断研究
感染症学雑誌
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- 巻
- 95
- 号
- 2
- 開始ページ
- 122
- 終了ページ
- 128
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- (一社)日本感染症学会
歯科では医科の約10%の抗菌薬が使用されており,薬剤耐性対策のためには歯科における抗菌薬適正使用も重要である.歯科領域における抗菌薬処方の問題について薬剤耐性(AMR)の視点から評価し,解決方法を模索するため,我々は歯科医に対してAMRへの意識,抗菌薬処方,採用抗菌薬などについてアンケート調査を行った.著者一名が講師として参加した「歯科における抗菌薬の使い方」講習会参加者のうち,同意が得られた歯科医師方のみを対象に無記名式のアンケート調査を実施した.アンケートは基本属性のほか,AMRの知識,取り組み,最も処方する機会の多い抗菌薬を調査し,また,院内で抗菌薬を採用している歯科医師に対しては,採用院内採用薬の数,種類,選択理由を調査した.さらに,各疾患の処置における抗菌薬予防投与のタイミングと処方日数も調査した.54名の歯科医師が回答した."AMR(薬剤耐性)"という言葉を知っていると回答した歯科医師の割合は全体の83.3%で,実際に何か対策をとっていると回答した割合は42.6%であった.最も処方する機会の多い抗菌薬は,56.8%がセファロスポリン系薬と回答し,ペニシリン系薬(29.5%),マクロライド系薬(13.6%)と続いた.院内採用されている抗菌薬として頻度が高かった抗菌薬はセファロスポリン系薬で,全体の93.0%の採用薬に含まれていた.ペニシリン系薬は全体の48.8%に含まれていた.抗菌薬を採用した理由は,「先輩に習った」が最も多く,回答者の63.6%を占めた.処置時に予防投与している抗菌薬は術後が78.6%と最も多く,術後投与している期間は3日間が79.6%と最も多かった.歯科医師はセファロスポリン系薬の処方の頻度が高く,ほとんどの院内採用薬にセファロスポリン系薬が含まれていた.採用薬のパターンや選択理由からは教育の重要性が示唆された.また,処置後投与が多く,ガイドラインが順守されていないことが,抗菌薬適正使用上の課題であると考えた.(著者抄録)
- ID情報
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- ISSN : 0387-5911
- 医中誌Web ID : V414510002