2018年
土壌-根-幹-枝-葉の水ポテンシャル観測によるヒノキの水利用評価
水文・水資源学会研究発表会要旨集
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- 巻
- 31
- 号
- 0
- 開始ページ
- 56
- 終了ページ
- 56
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- DOI
- 10.11520/jshwr.31.0_56
- 出版者・発行元
- 水文・水資源学会
自然条件下での水ストレスの大きさの違いにより、樹木の通導系のどの部位に、どの程度の通水性の変化が生じるのかを詳細に把握するために、滋賀県大津市の桐生水文試験地に生育する60年生ヒノキ個体(樹高23 m, DBH15 cm)を対象に、幹下部、幹上部および主枝にサイクロメータを設置し、2014年7月より水ポテンシャル測定を開始した。並行して、テンシオメータ法による土壌水ポテンシャル測定、グラニエ法による幹下部、幹上部および主枝の樹液流速度の測定も行った。また、二週に一度、樹冠内三高度でLI6400による個葉ガス交換速度測定、プレッシャーチャンバー法による側枝および葉の水ポテンシャル測定を行った。2016年6月からは、二週に一度、プレッシャーチャンバー法により細根の水ポテンシャルを測定した。<br>水ポテンシャル値は、水の流れに従い土壌>幹下部>幹上部>主枝>側枝>葉となった。幹および主枝の水ポテンシャルの日変化はVPDの変化とよく一致し、降雨時にはゼロ付近を示した。もっとも長期間測定した幹の水ポテンシャルの季節変化をみると、夏から秋にかけて上昇傾向が見られた。<br>土壌-幹-枝-葉の水ポテンシャル差と個葉蒸散速度を用いて、樹体内の通水コンダクタンスを計算すると、土壌―幹および幹―葉の通水コンダクタンスは同程度であった一方で、側枝―葉の通水コンダクタンスは比較すると非常に大きく、この部位には水輸送抵抗が殆どかかっていないことが示された。従って、樹体内の水輸送抵抗は、土壌から幹へ、また幹から主枝へと水が輸送される際に大きいと考えられる。また、幹と樹冠内三高度における葉の通水コンダクタンスを比較すると、上層ほど通水コンダクタンスが大きかった。これは、光が良く当たる上層の葉ほど高い通水性を維持しながら高い光合成速度および気孔開度を実現していることを示している。<br>一方、晴天日の朝方に、幹上部の水ポテンシャルは、幹下部よりも約2時間遅れて低下を開始し、夕方の水ポテンシャルの回復も遅れた。同様のタイムラグは樹液流速度の観測結果からも確認された。このことから、ヒノキでは、前日に樹体内に貯留した水を翌日の蒸散に利用していることが示唆された。<br>当日の発表では、細根の水ポテンシャル値も加えた樹体各部の通水コンダクタンスを示す。また同試験地内に生育する100年生ヒノキ個体の水利用特性との比較検討も行う予定である。
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- DOI : 10.11520/jshwr.31.0_56
- CiNii Articles ID : 130007554099