共同研究・競争的資金等の研究課題

2018年4月 - 2021年3月

ヤドカリの殻交換は捕食リスクに便乗した感覚トラップにより促進される?

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
18K06416
担当区分
研究分担者
配分額
(総額)
3,900,000円
(直接経費)
3,000,000円
(間接経費)
900,000円

ヤドカリの殻交換は仕掛ける側が利益を得るための闘争行動であり、資源を巡る闘争行動またシグナルの進化などの研究に適した題材である。鉗脚や歩脚で相手の殻を掴み、自分の殻を短い間隔で連続して相手の殻に数秒間打ち付ける打突行動が繰り返され、耐え切れずに出て来た相手をつまみ出し交換が成立する。敗者は柔らかい腹部を無防備な状態で外部に曝す時間が長くなるのに、なぜ諦めて出てくるのか?
仕掛ける側の打突により殻に与えられる衝撃が捕食者の貝殻破砕に伴う衝撃と類似しており、防御側個体が捕食リスクと誤認して殻から出てくる、という捕食リスクへの応答に便乗した、攻撃する側による感覚トラップ仮説を、私は提案する。そして、実験的に捕食リスクを付加されたヤドカリが、打突により早く降参するかどうかを調べることにより、仮説を検証する。
過去の実験において、捕食者のイシガニと仕切り越しに同じ水槽に入れられたテナガツノヤドカリの、約半数が1ヶ月で死亡したため、捕食されなくてもストレスにより死亡したと考えられた。そこでまず、どうすればヤドカリに捕食リスクを短時間で効率的に認識させられるかの条件設定のための実験をテナガツノヤドカリおよび同所的に生息するユビナガホンヤドカリを用いて行った。捕食者イシガニとの同居により2種のヤドカリが、どのような行動を示すかを調べた。同じ水槽内でイシガニに同種ヤドカリの殻を割らせ捕食させたところ、テナガツノヤドカリでは初日から逃避行動を行う個体が増えた。この結果から、捕食リスクの認識は1日で十分だと考えられる。一方、ユビナガホンヤドカリでは2週間の実験全体を通して、そのような顕著な変化は見られなかった。
また、様々な殻条件でイシガニによる捕食実験を行ったところ、ヤドカリ2種ともに、ウミニナ類よりもイボキサゴの殻を利用する個体が、また、殻口に傷の入った殻を利用する個体が捕食されやすかった。

ID情報
  • 課題番号 : 18K06416

この研究課題の成果一覧

論文

  5

講演・口頭発表等

  11