2018年4月 - 2021年3月
ヤドカリの殻交換は捕食リスクに便乗した感覚トラップにより促進される?
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
ヤドカリの殻交換は仕掛ける側が利益を得るための闘争行動であり、資源を巡る闘争行動またシグナルの進化などの研究に適した題材である。鉗脚や歩脚で相手の殻を掴み、自分の殻を短い間隔で連続して相手の殻に数秒間打ち付ける打突行動が繰り返され、耐え切れずに出て来た相手をつまみ出し交換が成立する。敗者は柔らかい腹部を無防備な状態で外部に曝す時間が長くなるのに、なぜ諦めて出てくるのか?
仕掛ける側の打突により殻に与えられる衝撃が捕食者の貝殻破砕に伴う衝撃と類似しており、防御側個体が捕食リスクと誤認して殻から出てくる、という捕食リスクへの応答に便乗した、攻撃する側による感覚トラップ仮説を、私は提案する。そして、実験的に捕食リスクを付加されたヤドカリが、打突により早く降参するかどうかを調べることにより、仮説を検証する。
過去の実験において、捕食者のイシガニと仕切り越しに同じ水槽に入れられたテナガツノヤドカリの、約半数が1ヶ月で死亡したため、捕食されなくてもストレスにより死亡したと考えられた。そこでまず、どうすればヤドカリに捕食リスクを短時間で効率的に認識させられるかの条件設定のための実験をテナガツノヤドカリおよび同所的に生息するユビナガホンヤドカリを用いて行った。捕食者イシガニとの同居により2種のヤドカリが、どのような行動を示すかを調べた。同じ水槽内でイシガニに同種ヤドカリの殻を割らせ捕食させたところ、テナガツノヤドカリでは初日から逃避行動を行う個体が増えた。この結果から、捕食リスクの認識は1日で十分だと考えられる。一方、ユビナガホンヤドカリでは2週間の実験全体を通して、そのような顕著な変化は見られなかった。
また、様々な殻条件でイシガニによる捕食実験を行ったところ、ヤドカリ2種ともに、ウミニナ類よりもイボキサゴの殻を利用する個体が、また、殻口に傷の入った殻を利用する個体が捕食されやすかった。
仕掛ける側の打突により殻に与えられる衝撃が捕食者の貝殻破砕に伴う衝撃と類似しており、防御側個体が捕食リスクと誤認して殻から出てくる、という捕食リスクへの応答に便乗した、攻撃する側による感覚トラップ仮説を、私は提案する。そして、実験的に捕食リスクを付加されたヤドカリが、打突により早く降参するかどうかを調べることにより、仮説を検証する。
過去の実験において、捕食者のイシガニと仕切り越しに同じ水槽に入れられたテナガツノヤドカリの、約半数が1ヶ月で死亡したため、捕食されなくてもストレスにより死亡したと考えられた。そこでまず、どうすればヤドカリに捕食リスクを短時間で効率的に認識させられるかの条件設定のための実験をテナガツノヤドカリおよび同所的に生息するユビナガホンヤドカリを用いて行った。捕食者イシガニとの同居により2種のヤドカリが、どのような行動を示すかを調べた。同じ水槽内でイシガニに同種ヤドカリの殻を割らせ捕食させたところ、テナガツノヤドカリでは初日から逃避行動を行う個体が増えた。この結果から、捕食リスクの認識は1日で十分だと考えられる。一方、ユビナガホンヤドカリでは2週間の実験全体を通して、そのような顕著な変化は見られなかった。
また、様々な殻条件でイシガニによる捕食実験を行ったところ、ヤドカリ2種ともに、ウミニナ類よりもイボキサゴの殻を利用する個体が、また、殻口に傷の入った殻を利用する個体が捕食されやすかった。
- ID情報
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- 課題番号 : 18K06416
この研究課題の成果一覧
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論文
5-
Behavioral Ecology and Sociobiology 77(6) 2023年5月25日 査読有り最終著者
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Journal of Ethology 39(1) 115-123 2021年1月 査読有り最終著者
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日本ベントス学会誌 75 35-42 2020年12月25日 査読有り最終著者責任著者
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Ethology 126 660-667 2020年5月 査読有り
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J Mar Biol Assoc UK 99(4) 901-910 2019年 査読有り最終著者
講演・口頭発表等
11-
第70回日本生態学会大会 2023年3月17日
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南紀生物同好会2022年度秋の研究発表大会 2022年12月11日
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南紀生物同好会 2021年 秋の研究発表大会 2021年12月12日
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南紀生物同好会 2021年 秋の研究発表大会 2021年12月12日
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南紀生物同好会 2021年 秋の研究発表大会 2021年12月12日
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日本甲殻類学会第59回大会. オンライン大会 2021年10月
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日本動物行動学会第40回大会. オンライン大会 2021年9月
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日本動物行動学会第38回大会 2019年11月 日本動物行動学会
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第66回日本生態学会大会 2019年3月 日本生態学会