2004年
フィラデルフィアにおける黒人居住地域の変遷と都市再開発
人文地理学会大会 研究発表要旨
- 巻
- 2004
- 号
- 0
- 開始ページ
- 41
- 終了ページ
- 41
- 出版者・発行元
- The Human Geographical Society of Japan
昨今のアメリカにおける貧困問題は,都市インナーエリアに集中している。景気回復による低失業率という実態の裏側には,低賃金労働者の増加による所得格差の拡大,インナーエリアの治安の悪化などが存在し,いまだに人種間の格差は激しい。フィラデルフィアはこういった背景がはっきりと目に見える形で現れている都市のひとつである。日本におけるフィラデルフィアに関する都市研究の多くは60年代に停止しており,それらは先進的大都市, 工業発展もしくは歴史として扱われたものがほとんどである。確かに戦後から60年代までの都市再開発,とくに市中心部における再開発は現在の都市機能の中核をになっているといえる。しかしインナーエリアの再開発は十分におこなわれず,70年代以降, 市の人口は減少に転じ,ヒスパニック,アジア系移民の増加により治安はさらに悪化していくことになる。戦後からの白人郊外移住の傾向も衰えることなく,1983年には黒人市長も誕生,2000年のセンサスによると市内における黒人の全人口に占める割合は,白人45% に対して43%と約半数を占めるまでになっている。アメリカのほかの都市同様,人種間の居住分化はほとんどの地域で行われ,市の北部および西部における一帯は低所得層の黒人の居住地域となり,一般に薬物や殺人など,犯罪の多い危険な地域としてフィラデルフィアのイメージを形成している。本発表では,このような居住分化によるインナーエリアの拡大およびそれに伴う街の荒廃と,戦後の都市再開発との関係性に着目し,ブライトエリアの形成存続過程の考察を試みる。
- リンク情報
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- CiNii Articles
- http://ci.nii.ac.jp/naid/130005020855
- ID情報
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- CiNii Articles ID : 130005020855
- identifiers.cinii_nr_id : 9000283786188