共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2022年3月

チンパンジー・ボノボの共感性:比較認知実験による多層的検討

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
19J22889
配分額
(総額)
3,400,000円
(直接経費)
3,400,000円
(間接経費)
0円

本研究は、チンパンジー・ボノボを対象とした認知実験によって、共感性をはじめとする2種の社会認知能力を解明することを目的とする。令和元年度はまず、チンパンジーの時間知覚・自己統御を調べるタッチパネル課題をおこなった。報酬獲得までの遅延時間と報酬量が異なる2つの選択肢からいずれかを自由に選択する課題において、報酬獲得効率が向上するように状況に応じてチンパンジーが選好を切り替えることが示唆された。
また、前年度に引き続き、赤外線サーモグラフィを用いた皮膚温測定実験を進展させた。同様の手法を用いた前年度の研究では、チンパンジーが他者の怪我に対して情動的に反応する可能性が示唆された。令和元年度は、チンパンジーにとってなじみのある場面で他者の怪我に対する反応を調べた。実験の結果、チンパンジーに反応はみられなかった。このことから、状況そのものの理解だけでなく、傷や出血といったわかりやすい手がかりが重要であることが示唆された。加えて令和元年度には、怪我をする他者と自分との親密さによってチンパンジーの反応が異なるかを調べる実験にも着手した。この実験にはより多くのチンパンジーが参加しており、反応の個体差についても調べる予定である。
さらに、チンパンジー音声コミュニケーションに関する視線計測実験をおこない、同種の警戒声を聞いた時にチンパンジーがヘビの画像をより長く見ることがわかった。このことから、チンパンジーが同種の警戒声とヘビの視覚情報とを自発的に連合させることが示唆された。また同様の視線計測実験によって、類人猿における他者身体運動の理解を調べた。ヒト幼児を対象とした過去の実験と同様の刺激を類人猿に提示し、注視時間と瞳孔径を測定した。実験の結果、類人猿もある程度は他者の身体運動に構造的な制約があることを理解している可能性が示唆された。
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ID情報
  • 課題番号 : 19J22889