講演・口頭発表等

2017年

GISの実習用オープン教材の一般公開に向けた改良

地理要旨集
  • 山内 啓之
  • ,
  • 小口 高
  • ,
  • 早川 裕弌

記述言語
日本語
会議種別

これまでにGIS教育の充実を目的に、科学研究費による複数のプロジェクトが行われ、基本となるコアカリキュラムと講義用の教材が整備された。一方で、実習に関する検討は少なかった。そこで、GISの実習用教材を開発し、公開するプロジェクトを平成27年度より開始した(科学研究費基盤研究A「GISの標準コアカリキュラムと知識体系を踏まえた実習用オープン教材の開発」、平成27~31年度、代表者:小口 高)。<br> 本プロジェクトでは、学部3~4年生の実習授業や自主学習を対象に、室内におけるGISソフトウェアの活用、GISと関連した野外調査および研究のための機材の活用、インターネットでのGIS技術の活用に関する教材を開発してきた。開発した教材は、一般公開に向けてGitHubリポジトリで運用し、大学の授業等で試験的に利用してきた。<br> 室内におけるGISソフトウェアの活用に関する教材は、日本独自の地理情報科学の知識体系を教科書として編集された『地理情報科学 GISスタンダード』(浅見ほか編, 2015)の章構成を参考に、体系的な実習用教材として整備した。操作手法を解説するソフトウェアには、QGISのように無償で利用できるものを採用した。<br> GISと関連した野外調査および研究のための機材の活用に関する教材は、個人の所有が難しい高価な機材を対象に、機能の解説や操作手法をまとめた動画を制作した。これまでに、ドローン(UAV)と3Dプリンタに関する教材を整備した。動画は、要所部に字幕の形でコメントを挿入し、利用者が理解しやすい教材になるように工夫した。また、動画で解説が不足している箇所を補足するためのテキスト教材も作成した。<br> インターネットでのGIS技術の活用に関する教材では、WEB地図の利用や開発の手法と、WEB GISで利用するデータの作成手法について解説した。WEB地図やデータの作成には、高度なプログラミングの知識が必要となる。そのため、容易に利用できるライブラリやQGISのプラグインを活用し、なるべく簡単にWEB地図の開発やデータの作成が学習できるように配慮した。<br> 開発した教材は、PowerPointファイルとともに、汎用性が高いMarkdownファイルで整備した。Markdownファイルでは、複数の教材の横断的な利用が煩雑になる。そのため、Node.jsの環境下で利用できるGitBookライブラリを用いて、全ての教材をリンクさせ、電子書籍のようなスタイルで閲覧できるようにした。<br> 教材はGitHubリポジトリで運用し、クリエイティブコモンズに基づく表示―継承のライセンスで、試験的な提供を行っている。また、GitHubの非利用者でも、用途に応じて教材にアクセスできるように、本プロジェクトのWEBページの作成も行った。<br> GitHubを利用することで、第3者からPull Requestとよばれる教材の改良案を受け取ることができる。本プロジェクトでも、試験運用中に協力者のPull Requestによる教材の改良を行った。第3者による教材の改良は、ソフトウェアのバージョン更新に教材が対応できない場合等に有効であり、効率的な教材の修正や補足が可能となる。<br> 本プロジェクトでは、大学の授業等において開発した教材を実際に利用し、その結果に基づく改良を行ってきた。学習者が、本教材に取り組みやすいように教材を修正するとともに、GIS学習の基本となる項目を理解できるように初学者の視点から改良を行った。また、自主学習者向けに、教材の難易度と学習順の設定を行った。他に、講習会向けに、複数の教材を組合せて短時間で学べるコースの作成も行った。<br> 本プロジェクトで開発した教材は、試験運用や講習会等での利用を経て、さらに改良を重ねた後に、大学等の実習授業や自主学習に利用できるように、一般公開する予定である。

リンク情報
URL
http://ci.nii.ac.jp/naid/130006182644